日本対がん協会

第92回 体力アップ…を体験!〈vol.1〉パーソナルトレーナーを味方にしてみた!/木口マリの「がんのココロ」

掲載日:2026年3月6日

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 がんになったことをきっかけに、新しく動き出したことって、意外とたくさんある気がします。今回の「体力アップ」もそのひとつ。

 なんと、人生初のパーソナルトレーニングを開始しました。専属のトレーナーに指導を受けつつ運動するって、ちょっと憧れでもあったのです。でもずっとその域を超えることはありませんでした。

 それが今、「がん治療後、体力がなさすぎて困る」という事態をきっかけに実現に至るという。そう考えると、いつも身体は、私の思いを叶えるべく(だいぶ強引に)動いてくれているような気さえしてきます。

 ともあれ、長いこと困っていた体力不足がプロの手を借りてどう変わっていくのか。まずは半年、トライしてみることにしました!(半年に渡っての3部作を予定)

「どうしたものか……」の先で、運動のプロに出会う

これからがんばるぞー!の意気込みを込めて

 そうはいっても、がん治療を経ての身体は、やはり健康な人とは違う部分が多いもの。一見元気そうであっても、さまざまな不具合があることがあります。

 私の場合は、後遺症として下肢のリンパ浮腫と骨粗しょう症があります。特にリンパ浮腫は同じ運動をしても日によって何ともなかったりひどく悪化したりと、反応が読めないのが困りどころ。何をどうしたらいいのか分からずにいました。疲れやすさも、おそらくリンパ浮腫の影響が少なからず関係していると思っています。

 近年では「がんになったら運動しよう」と言われているけれど、どんな運動をどの程度するのがいいのだろう。個々に状況・状態が違うがん経験者は、必要な運動や運動量も大きく違うはず。

 自分で何とかできないものかと試行錯誤し、「効果があったらそれが正解なのだろう」と、YouTubeを見ながらヨガや筋トレを続けてとみたものの、「う〜ん、これでいいのだろうか??」という疑問は常にありました。しかも体力的にはあまり改善した気がしないという。

 さらには年齢(のせいにする)が上がるにつれ、体重も着々と増えていきました。以前、治療を受けたうえに取材までさせてもらったリンパ外科医・三原誠先生&原尚子先生に「リンパ浮腫の改善には体重コントロールが大事」と教わったのに……!

 (取材記事はこちら『第63回 リンパ浮腫を治したい! 専門医に聞いてみた 〜リンパ外科医 三原 誠先生・原 尚子先生インタビュー〜(前編)/木口マリのがんのココロ』https://www.jcancer.jp/gsclub/tips/17405

 “今の自分”に合う運動とは、いったい何なのだろう。

作っていただいたキグチ専用カルテ

「これはもう、一人ではムリ!!」……というところで偶然にも出会ってしまった。アスレティックトレーナーであり、乳がん経験者の永田美香さん(以下、美香さん)に!!

 美香さんは、準医療従事者としての米国国家資格を持つアスレティックトレーナー。乳がん経験者を運動でサポートする「Beyond Mamma」の主宰者でもあります。

 さらに詳しいお話は、別途、取材記事を執筆予定なのでそちらをご覧いただくとして、とにかく身体と運動のプロ!なのです(かつ、がん経験者のことも理解しているトレーナー!)。

運動スタート!…の前に、まずはワタシの身体を知る

トレーニングプランは状況によって変化していきます

キグチのここ数年の困りごとは、

・すぐ疲れる

・仕事の集中が続かない

・自律神経が乱れやすい(気がする)

・体重コントロール(数日前にヤバイと気づいた)など。

「体力が付きさえすれば、いろいろなことが改善するはず……!」という期待に、勝手に胸を膨らませつつ指導を受けることにしました。

 美香さんは「治療中の人でも受けられるように」というコンセプトで活動をされているそうで、セッションはすべてオンライン。いきなり運動!ではなく、開始前にスクリーニングを行います。

 運動におけるスクリーニングとは、ケガや持病の悪化を防ぎ、トレーニングの質を高めるための事前チェックのこと。がん経験者の運動の場合、「安全性を第一に、確実に目標を達成すること」がポイントで、スクリーニングはとっても重要だそう。

 まずは心肺機能、姿勢や動きの特徴、脚力などをチェックし、目標を設定。私が感じている身体的な不安要素(後遺症のことなど)や、何をどう改善したいかなどもじっくりと相談しました。

「オンラインでチェックできるの!?」と思うかもしれません。チッチッチッ。そこはやはりプロ。画面越しでも身体の動きである程度分かっちゃうようです(スゴイ!)。もちろん、心拍数などは教えてもらいながら自分で測りますが。

 私の場合は骨に負担がかかりすぎない動きを意識しつつ、浮腫の状態を観察しながら進めていくことになりました。

 セッションは、基本的に月に2回。その都度、私の身体に合ったプログラムを考えてくれて、マンツーマンで指導を受けながら運動します。さらにセッションの録画データをもらい、次回まではそれを見ながら自分で運動していきます。

 そのほかにも「朝に日の光を浴びることは大事。朝のウォーキングは、20〜30分を週に2回(目標は3〜4回・心拍数134拍/分くらいの強度で)」など取り入れるべき運動のほか、「夜、湯船に浸かるようにする」「摂ってほしい水分量」など、日常生活でのアドバイスも。※注:いずれも現在のキグチの場合の目標

 そのときどきの身体の状態(筋肉痛の出方、リンパ浮腫の様子など)や疑問点はSNSで連絡し、相談しながら行います。

「一緒に歩んでくれる人がいる」と何かが変わっていく

オンライントレーニング、スタート!

 プロに依頼することの利点は、「正しい知識のもと、自分を引っ張ってくれる」ということ。一緒に歩んでくれる人がいると、それだけで前に進めるものです。

 おまけに「できるだけ良い報告をしたい」という意識が働くためか、一人のときも意外とちゃんとがんばれるという。

 そしてまた、「身体や運動のホントのところ」をその都度たずねられるというのは、かなり大きいと思いました。

 これまでは「こんな不具合が出たけど、このまま続けていいのかな?」と疑問に思うところでストップしていた(あるいは運動自体をやめてしまっていた)のが、ちゃんと答えや解決策をもらえることで安心できるし、私に合った形で運動をコントロールできれば思い描く自分に近づくことができます。  


 私が美香さんのもとで運動をスタートしたのは、2026年1月下旬。それから約1カ月半続けてみて、やはりやってよかったと感じています。当然ながら、まだ「体力がついた」とまではいかないけれど、少しずつ、さまざまな変化もありました。

 朝のウォーキングを取り入れる(たまに)ようになって1日の活力を感じたり、夜にお風呂に浸かることが増えて、以前よりも心地よく眠れるようになったり。 いずれもふわっとした爽快感というか、「やってみたら心地いい」というものなのだけど、何となく日々の質が上がったような気がしています。

 良いと分かっていても日常の行動を変化させるのは難しいものですが、「そこそこできるようになった!」というだけでも自分を褒めてあげたくなります(いや、褒めるのは美香さんか!)。

 今のところ、そんな「そこそこ」な変化ではあるけれど、半年後にはどうなっているのでしょうか。今後、またレポートしたいと思います。乞う、ご期待!

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●永田美香(ながた みか)

Beyond Mamma(https://www.beyondmamma.com)主宰。米国国家資格を持つアスレティックトレーナー。 スポーツ現場での20年以上の経験と、自身の乳がん治療の経験をもとに、乳がん治療中・治療後の方が安心して運動に取り組める環境づくりを行っている。

個別運動サポートのほか、乳がん専門運動指導者養成講座「feets」を主宰し、医療と運動の橋渡し役として活動。SNSや講座を通じ、「乳がんになっても運動ができる社会」の実現に向けて、専門知識と経験の両面から発信を続けている。

木口マリ
「がんフォト*がんストーリー」代表 執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。2013年に子宮頸がんが発覚。一時は人工肛門に。現在は、医療系を中心とした取材のほか、ウェブ写真展「がんフォト*がんストーリー」を運営。ブログ「ハッピーな療養生活のススメ」を公開中。