治療中のがん患者さんの副作用にはさまざまなものがあります。2015年に厚生労働省が示した、がん対策を進めるための「がん対策加速化プラン」の中に「がんとの共生をすすめましょう」という項目があり、そのためには、がん患者さんの体調を整えたり治療の副作用を減らすために行われる「支持療法」の研究を進めることが重要であると記載されました(図1)。さらに具体的に、そのためには栄養療法、リハビリテーション療法の重要性に加え、「漢方薬を用いた支持療法の研究が必要である」ということが掲げられました。
さて、ここで示されているがん患者さんの副作用のワースト4を見てみましょう(図1)。
1位は倦怠感で、2位に今回お話しする口内炎が入っています。ちなみに3位は食欲不振、4位は便秘です。がん患者さんは抗がん剤や放射線治療により、高い確率で口内炎を発症します。口内炎には現在もよく効く薬がない中、漢方薬半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)が口内炎を治すのに有効であることが基礎および臨床研究の結果、明らかになってきました。半夏瀉心湯は半夏(はんげ)、黄芩(おうごん)、乾姜(かんきょう)、甘草(かんぞう)、大棗(たいそう)、人参(にんじん)、黄連(おうれん)という7種類の生薬でできています(図2)。
口の中の細胞(ケラチノサイト)や実験動物を用いた研究により、半夏瀉心湯は複数の作用を介して口内炎の症状を改善していることがわかってきました。口内炎を構成する7つの生薬のひとつひとつに、抗酸化作用、抗菌作用、抗炎症作用、鎮痛作用、組織修復作用など多くの作用があることがわかってきたのです(表1)。
このように半夏瀉心湯の7種類の生薬がそれぞれの役割をもって口内炎の治癒に働いていることがわかってきました。特に生姜を蒸して乾燥させた乾姜は上記5つすべての作用を有しています。「蒸し生姜」恐るべしです。口内炎に対し是非、漢方薬半夏瀉心湯の利用を考えてみてください。
医師が処方する医療用漢方薬は148種類あります。この中で口内炎治療に適応を持つ漢方薬は、今回ご紹介した半夏瀉心湯に加え、黄連湯(おうれんとう)、茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)の3種類があります。半夏瀉心湯と黄連湯はどちらも7種類の生薬でできていて、黄連湯は半夏瀉心湯の黄芩が桂皮(けいひ)(シナモン)に代わったものです。つまりほぼ同じ生薬で構成されているということです。しかし茵蔯蒿湯は茵蔯蒿、山梔子(さんしし)、大黄(だいおう)と全く異なる3種の生薬で構成されていますが、口内炎の適応を有します。構成生薬がすべて異なる茵蔯蒿湯も口内炎に効くというのは不思議だなという思いを持つのは私だけでしょうか。生薬って深いです。

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