自分らしく生きる~家計と外見ケアについてのイベントを開催しました~
がんサバイバー・クラブは3月31日、資生堂本社ビル(東京・汐留)で「がんになってからの暮らし~家計と外見ケアについて家族やご友人と一緒に考えませんか~」を開催しました。
前半は、NPO法人「がんと暮らしを考える会」理事長の賢見卓也さんが、がんの治療にかかるお金や、がんと診断された後に使える保険の制度などについての講演を行いました。
後半は資生堂ライフクオリティービューティーセンターが、治療の副作用による肌色変化のカバー方法と脱毛時の眉の描き方のアドバイスを行い、参加者は実際に体験しながら学びました。
一つ一つの問題を丁寧に解決していくことが大切
まず「がんと暮らしを考える会」の賢見卓也さんはこんな問いかけから講演を始めました。
「例えば、夜眠れないという症状を訴える患者さんがいた時に、医師は睡眠導入剤を処方して『十分に睡眠がとれるように」と患者さんの苦痛を取り除いてくれるかもしれません。しかしそれで本当に患者さんの抱える問題を解決に導くことができるでしょうか」
1枚のスライドが映し出されます。
サバイバーには4つの苦痛があると言われているそうです。
医療者の専門分野は身体的・心理的苦痛を軽減することです。しかし、「眠れない」と訴える患者の背景には、仕事や家計、家族や友人との関わりなど様々な悩みがあることが多いといいます。これらは社会的苦痛といわれるものです。
「がんと暮らしを考える会」は、社会的苦痛を軽減することを目的として相談事業やウェブサービス「がん制度ドック」を提供しています。
賢見さんは、「患者の苦痛を和らげるには、一つ一つ丁寧に問題を解決していくことが大切です」と語ります。
過去の経験からできた「がん制度ドック」
賢見さんには看護師として勤務していた頃印象深い体験があります。乳がんのステージ4と診断され、緩和ケアを選択した52歳の女性の看護にあたっていたときのことです。女性は仕事を続けるか退職するか深く悩んで、
「職場に迷惑をかけたくありません。しかし退職後の生活も不安で、考えるだけで涙が止まりません」
賢見さんに打ち明けました。
相談を受けた時、賢見さんはこれは病院で解決できる問題なのだろうかと思ったそうです。しかしすぐに思い直します。
「この方は医療者である自分に、家計の問題を相談しなくてはならないほど追い詰められているんだ」
この女性の話を深く聞くうちに、賢見さんは、安心して治療に取り組むために、いかに社会的苦痛を和らげることが大切かに気付きました。
相談事業:社労士とファイナンシャルプランナー(FP)に同時に相談
がんと暮らしを考える会では、がんと診断された方の社会的不安を少しでも軽くするために病院などの施設で相談事業を行っています。その際は、社会保険労務士とファイナンシャルプランナーが一緒に相談にのっているそうです。一つの問題を2人の専門家が異なる切り口から見ることでよりよい解決の方向が見えてきます。
「社会保険労務士は働くことの専門家です。一方、ファイナンシャルプランナーは家計やライフプランの専門家です」
がんと診断された時、自分が何日間会社を休めるか、その期間、有給か無給かなど、すぐにわかる人はあまりいないでしょう。
いざ直面しないと意識しない職場の規則や、社会の制度はたくさんあるものです。これらは社会保険労務士の得意分野です。一方、ファイナンシャルプランナーは、ライフプランや家計のやりくりを考えるときにとても頼りになります。
「職場に迷惑をかけたくありません。退職しようか迷っています」
「職場復帰したけれど、残業できず以前より収入が減ってしまいました」
「限られた収入の中で、どのように家計をやりくりしていったらいいのでしょうか」
「子どもの学費など、将来の出費にどのように備えていったらいいのか不安です」
賢見さんはこう話しました。
「仕事と家計、それぞれの専門資格を持つ2人で知恵を出し合い一人の患者さんの暮らしに向き合い、問題を解決に導いていけたらと思っています」
そして相談する前に、まずウェブサービスの「がん制度ドック」を使ってみてほしいと話しました。
「がん制度ドック」でまずは検索
「がん制度ドック」とは、がんと診断された方が、公的・民間の医療保険制度を検索できるウェブサービスです。誰でも無料で使えます。
利用者は、性別・年齢・がんの部位をはじめ、合計22個の質問に順番に答えていきます。
「あなたが加入している健康保険はどれですか」
「あなたの今後の仕事の展望についてうかがいます」
「あなたの住宅ローンについてお聞きします」
どの質問も、プルダウンで選んで回答できますので、文を入力する必要はありません。
質問に答えて、最後の「検索する」のボタンを押すと、使える可能性のある制度が一覧で表示されます。
「まずは『がん制度ドック』で自分の状況を整理してみてください」
賢見さんが話すと、参加者は「がん制度ドック」の使い方について真剣にメモをとっていました。
参加者からは、
「このような制度があることを知れてよかった。もっと早く知っていればよかった」
「お金についてのことはなかなか人に聞けないので、聞けてよかった」
などの声が寄せられました。
資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンターによるワンポイントアドバイス
続いて資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンターによる「副作用による外見変化へのカバー方法(ワンポイントアドバイス)」が行われました。男性も含めて20代から80代までの参加者が、実際に体験しました。
向かい合わせになった長机には、さまざまな色のファンデーションやメイク道具が置かれています。参加者は、それぞれ長机の上に置かれた鏡の前に座り、まずは肌色作りから始まりました。
資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンターの桜井奈緒美さんが、
「まず自分の肌の色にあった部分用ファンデーションを選んでみましょう」
と話し、3名のスタッフが1人ずつ、それぞれのテーブルに加わりました。
参加者は、
「今まで何気なく選んできたけれど、どの色が自分の肌色に似合うのでしょうか」
など積極的にアドバイスを受けながら、肌に合う色を選び、鏡を見ながら、部分用ファンデーションをカバーしたい部分に薄く伸ばすようにして馴染ませました。その後でパウダータイプのファンデーションで軽く押さえるようにして仕上げました。
続いて「眉の描き方」を案内しました。
「皆さん、眉のバランスって聞いたことがありますか」
桜井さんがそう問いかけ、参加者は利き手でアイブロウを持ち、鏡を見ながら、眉頭・眉山・眉尻の3点をとり、線でつなぎました。
「女性の場合は角度を10度くらいつけて山形にするとよいでしょう。男性の場合は、角度はつけません」
男性も女性も眉の標準バランスは同じですが、男性は長さをちょっと短めにするのがポイントだそうです。
今回初めて参加したという男性は、
「ちょっとアドバイスを受けただけでなんだか雰囲気が変わりますね」
とにこやかに話していました。(文:大石しおり)
賢見卓也氏 プロフィール
NPO法人「がんと暮らしを考える会」理事長。1999年兵庫県立看護大学卒業、2008年日本大学大学院グローバルビジネス研究科卒業。がん医療と生命保険業界の発展的なサービスの在り方について研究。がんになった際に利用できる公的・民間サービスに「がんと暮らしを考える会」を2013年設立。ウェブサイト
「がん制度ドック」を運営。