朝日がん大賞・日本対がん協会賞

「朝日がん大賞」は日本対がん協会賞の特別賞として、朝日新聞社の協力で2001年に創設されました。対象分野は、日本対がん協会の活動の柱である「がん予防」全般とし、がん征圧に向けて優れた実績をあげて社会に貢献し、かつ、第一線で活躍している個人・団体を顕彰します。将来性のある研究の発掘、医療機器類の研究・開発、患者・治癒者の活動やケアなどの分野も対象としています。
 
「日本対がん協会賞」は対がん活動に顕著な功績のあった個人及び団体を顕彰して、がん征圧運動の一層の高揚を図ることを目的としています。
 


朝日がん大賞

 
2023(令和5)年度の受賞者
 

「長年にわたる訪問看護や在宅ケア、マギーズ東京などを通じたがん患者・家族支援」

秋山 正子(あきやま・まさこ)氏 73 歳 認定NPO法人マギーズ東京 共同代表理事・センター長
 
聖路加看護大学(現聖路加国際大学)を卒業後、病院での臨床や看護教育に携わってきたが、1990 年にがんで余命1 カ月と告知された実姉の在宅療養を経験し、病院ではなく生活の場で療養できるよう看護を届ける仕事がしたいと考え、1992 年から東京都新宿区で訪問看護を始め、2001 年に「ケアーズ白十字訪問看護ステーション」を設立。がん患者を取り巻く環境が変わる中、2008 年11 月に参加した国際がん看護セミナーで、がん経験者や家族がくつろぎ、悩みを相談できる英国発祥のマギーズキャンサーケアリングセンターを知り、2011年に同センターを参考に、誰もが気軽に相談できる「暮らしの保健室」を高齢化が進む新宿区の大規模団地の一画に開設した。その後、北海道から九州まで同様の施設が広がっている。2016 年10 月、暮らしの保健室を発展させた形で、東京都江東区に日本初の正式なマギーズキャンサーケアリングセンターである「マギーズ東京」を開設した。マギーズ東京の運営費は寄付金で賄い、患者らは無料で相談できる。毎月の利用者が約500 人、これまでに3万6千人以上が訪れた。家でも病院でもない「第三の場所」として、原則予約なしで看護師ら専門職がじっくり話を聞き、利用者は自分で考える力を取り戻せると評価されている。
 

 
「朝日がん大賞」 過去の受賞者
 


日本対がん協会賞

 
2023(令和5)年度の受賞者・受賞団体(4個人、1団体)
 
◇ 個人の部 (50音順)
 
山口県
伊東 武久(いとう・たけひさ)氏 78 歳 徳山中央病院 緩和ケア内科主任部長
1977年に徳山中央病院産婦人科部長として赴任し、婦人科がんの予防と治療に積極的に取り組んだ。医療現場にとどまらず、テレビ出演などメディアを通じ、子宮頸がんの原因となるHPV感染を防ぐワクチン接種の普及啓発などにも努めた。2008 年の緩和ケア病棟開設を機に、緩和ケア内科医として末期がん患者・家族の支援にも取り組んでおり、がんの予防、治療から看取りまで長年にわたる功績がある。
 
埼玉県
高橋 道子(たかはし・みちこ)氏 80 歳 東大宮クリニック 院長
「女性の病気は女性が診るのが望ましい」との信念のもと、婦人科領域の悪性疾患の診断・治療に尽力した。埼玉県立がんセンター婦人科副部長などを経て、埼玉県健康づくり事業団診療所長を務め、子宮頸がん検診を中心にがん検診の啓発普及、精度管理や受診率の向上に努めた。退職後、地元に婦人科クリニック(婦人科・精神科・心療内科)を開業し、女性にとって敷居の低い かかりつけ医をめざして活動している。
 
福井県
広瀬 真紀(ひろせ・まき)氏 73 歳 福井県がん検診精度管理委員会 幹事
全国的には、がん検診の体制や精度管理は市町村単位で実施されるが、福井県では検診車による集団検診、医療機関での個別検診が県全体で一元的に管理され、検診機関のレベルアップ、精度管理や受診率の向上、がん検診に関する医療技術等の格差の是正が図られており、そうした体制の構築に貢献した。また、全国初の「胃がん内視鏡読影センター」を福井県医師会内に設けるなど先駆的な取り組みも評価された。
 
山口県
松本 常男(まつもと・つねお)氏 71 歳 山口県予防保健協会 副理事長
山口県成人病指導管理協議会の肺がん部会長や、がん登録評価部会の委員として長年にわたり、肺がん検診の普及啓発、精度管理の向上に貢献した。放射線科専門医、放射線診断専門医、肺がんCT 検診認定医として長年にわたり健康診断、がん検診での胸部レントゲン撮影等の診断に携わり、県民の健康保持増進に大きな役割を果たした。また、呼吸器専門医の育成指導に努めた。
 
◇ 団体の部
 
東京都
地方独立行政法人 東京都立病院機構 東京都立駒込病院(戸井 雅和 院長)
1986 年から白血病や悪性リンパ腫など血液がん患者らに対する造血幹細胞移植を行い、2013 年に全国初の造血幹細胞移植推進拠点病院に選定された。2023 年6月時点の移植数は2600 件超になる。コロナ禍の中では、都立病院として感染患者を積極的に受け入れる一方、無菌室病棟でドナーから患者への細胞移植を予定通り実施。2020~2021年の造血幹細胞移植数は全国トップとなっている。また、他施設の看護師、医師らを研修で受け入れるなど人材育成にも取り組んでいる。がん教育にも対応し、小中学校へ外部講師として医師を派遣し、正しい知識の普及啓発にも貢献している。
 

日本対がん協会賞 過去の受賞者(個人)
日本対がん協会賞 過去の受賞者(団体)
 

《2023年度 選考委員会》

委 員 長  垣添 忠生(日本対がん協会 会長)
副委員長  大内 憲明(東北大学大学院 医学系研究科 特任教授、東北大学名誉教授)
選考委員  梅田 正行(日本対がん協会 理事長)
(50音順)   佐野 武(がん研究会有明病院 病院長)
      津金 昌一郎(国際医療福祉大学大学院 医学研究科 公衆衛生学専攻 教授)
      野瀬 輝彦(朝日新聞東京本社 くらし報道部長)
      松本 吉郎(日本医師会 会長)

《2023年度 選考委員会》

<委員長>
垣添 忠生(日本対がん協会 会長)
<副委員長>
大内 憲明(東北大学大学院 医学系研究科 特任教授、東北大学名誉教授)
<選考委員(50音順)>
梅田 正行(日本対がん協会 理事長)
佐野 武(がん研究会有明病院 病院長)
津金 昌一郎(国際医療福祉大学大学院 医学研究科 公衆衛生学専攻 教授)
野瀬 輝彦(朝日新聞東京本社 くらし報道部長)
松本 吉郎(日本医師会 会長)