日本対がん協会

報道向け発表

HPVワクチン男性接種に関する調査報告 (2025年度)

2026年03月05日

発表のポイント

  • HPVワクチン認知率は、父親より母親の方が高く、20ポイント以上のスコア差
  • 「男性でもHPVワクチン接種できる」の認知率は全体で39.4%
  • 「接種してほしい計」は全体で55.3%。父親の方が接種意向が高い

調査の背景

日本では、2010年11月から、子宮頸がん等ワクチン接種緊急事業が開始された。2013年にはHPVワクチンの女性への定期接種が始まったが、厚労省審議会で、ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な疼痛の頻度がより明らかになり、国民に適切な情報提供ができるようになるまでの間、定期接種を積極的に勧奨すべきではない、とされた。これを受けて、2013年6月14日に積極的勧奨差し控えが厚労省健康局長名で通知されたが、これ以降も審議会などで議論が進み、2022年4月に積極的勧奨は再開された。

こうした動きと並行して、男性の定期接種化への議論も盛んになりつつある。WHOによると、世界では男性を対象にした定期接種の導入が進んでおり、日本でも市区町村では、女性の定期接種対象と同じ年代の男性を対象に、独自に費用助成する例も出ている。今回の調査で、男性接種の認知の状況を探り、議論の土台となるデータの提供を目的とした。

調査の概要

調査対象=定期接種対象となる小学校6年~高校1年生(2009年度~2013年度生まれ)の子どもを持つ両親

公益財団法人日本対がん協会(垣添忠生会長)は、男性へのHPVワクチン接種をめぐる意識や状況を調べるために、前年の2024年度調査と同時期の2025年11月7日~11月11日にウェブアンケート調査を実施した。対象者は、定期接種世代の小学6年生~高校1年生(2009年4月2日~2013年4月1日生まれ)の男性と女性の長子を持つ父母に代理回答をしてもらい、回答数1670サンプルを得た。

調査の主な内容

HPVワクチンの認知度

HPVワクチンの認知率については、全体で77.1%。女性の長子、男性の長子いずれも父親よりも母親の方が認知率は高く、20ポイント以上のスコアの差が見られる。

 

HPVワクチンは「子宮頸がん予防」の文脈で訴求されることが多く、女性に関連する情報として認識されており、母親の方が情報接触機会が多いためと考えられる。

HPVワクチンの認知率は男性の長子を持つ親より、女性の長子を持つ親の方が高く、10ポイント以上のスコア差が見られる。HPVワクチンが、女性の健康問題(子宮頸がん予防)として認識されていることも背景になっている可能性がある。

 

HPVワクチンの認知度(2009年度―2013年度生まれの子を持つ両親)

男性のワクチン接種の認知・理解度

  • 「男性でもHPVワクチンを接種できること」の認知率は、TOTAL(HPVワクチン認知者ベース)で39.4%。HPVワクチン認知者で4割程度しか認知していない。
  • 「男性でも接種できること」の認知でも女性の長子を持つ母親のスコアが高く、女性の長子を持つ母親はHPVワクチンについて情報収集する中で認知したと推察される。
  • HPVワクチン理解度では、全体(HPVワクチン認知者ベース)では「HPVは男女ともに誰にでも感染する可能性があること」が最も高く、45.5%。
  • 父親より母親の方が理解度が高い傾向にあり、男性がHPVに感染することによる影響に関する内容でも、女性の長子を持つ母親の理解度が全般的に高い。

男性のワクチン接種認知度(HPVワクチン認知者)

HPVワクチン理解度(HPVワクチン認知者)

男児のHPVワクチン接種実態

  • 男性の長子のHPVワクチン接種経験は、全体で3.1%。
  • HPVワクチンの接種理由としては、「ネット広告・記事でみたから」が最も多かった。

HPVワクチン接種経験(2009年度-2013年度生まれの男性の長子を持つ親 かつ HPVワクチン認知者)

HPVワクチン接種理由(2009年度-2013年度生まれの男性の長子を持つ親 かつ HPVワクチン認知者)

男性のワクチン今後接種意向

  • 男性のワクチンの今後の接種意向について、全体では「接種してほしい計」が55.3%。
  • 「接種してほしい計」のうち、母親は52.4%、父親は59.7%と、父親の方が接種意向が高い。

まとめ

HPVワクチンについては、2020年に、4価ワクチンが男性へ適応拡大され、25年8月には9価ワクチンも適応拡大が承認された。HPVワクチンは子宮頸がんのほか、性器周辺にいぼができる尖圭コンジローマや肛門がんの予防効果が期待できるため、男性の定期接種への補助に取り組む自治体も出ている。厚労省の審議会でも、定期接種化についての議論が進められている。

和歌山県立医科大の上田豊教授(先進予防・健康医学)は「母親の意識を探る調査は過去にも取り組み例があるが、父親も含めた調査は珍しい。男性接種の理解を広げる意味でも、参考になるデータだ」と指摘している。

日本小児科学会や日本産科婦人科学会など32団体から成る予防接種推進専門協議会が2025年10月に、厚労省に対して定期接種化への要望書を提出している。

世界では男性を対象としたHPVワクチンの定期接種導入が進められているが、日本大学医学部産婦人科学の川名敬教授は「近年は日本でも男性接種に対する認知度が上がり、公費助成に取り組む自治体も増えてきているが、接種の拡大には限界がある。定期接種化に向けた国全体での議論を進める必用がある。今回の対がん協会の調査も議論の素材として利用できるのではないか」と話している。