2026年03月05日
日本では、2010年11月から、子宮頸がん等ワクチン接種緊急事業が開始された。2013年にはHPVワクチンの定期接種が始まったが、厚労省審議会で、ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な疼痛の頻度がより明らかになり、国民に適切な情報提供ができるようになるまでの間、定期接種を積極的に勧奨すべきではない、とされた。これを受けて、2013年6月14日に積極的勧奨差し控えが厚労省健康局長名で通知されたが、これ以降も審議会などで議論が進み、2022年4月に積極的勧奨は再開された。
定期接種対象=
小学校6年~高校1年相当(12-16歳)の女性
こうした状況を受けて、定期接種対象の接種状況や意識の違いを探り、ワクチン施策に反映させることを目的に、「HPVワクチン調査」(ウェブアンケート調査)を2024年度に続き、2025年度も定期接種世代を対象に実施した。
公益財団法人日本対がん協会(垣添忠生会長)は、HPVワクチンをめぐる状況を調べるために、前年の2024年度に実施した調査と同時期の2025年10月17日~10月21日にウェブアンケート調査を実施した。対象者は、定期接種世代の小学6年生~高校1年生(2009年4月2日~2014年4月1日生まれ)の女性で、母親に代理回答をしてもらい、回答数5788サンプルを得た。
定期接種対象では、年代が高くなるほど、接種経験率は高い結果となった。
全年代において、前回の2024度年調査と比較して、接種経験率は12~22ポイント程度上昇した。定期接種対象では、子宮頸がん・HPVワクチンの認知率も上昇していた。
全年代において、前回の同年齢の接種率と比較しても高い水準にあり、定期接種対象に向けて現状で進められているHPVワクチンに関する認知拡大施策や情報提供、公費助成施策などが接種行動に結びついている可能性を示した。ただ、2012年度生まれから下の年代では相対的に上の年代よりも接種率が低く、この年代へのアプローチが課題として浮かび上がった。
*「シルガード9」「ガーダシル」「サーバリックス」の接種回数は計3回だが、シルガード9の場合は、15歳になるまでに1回受ける場合は計2回になる。2026年度からは定期接種の対象は「シルガード9」のみになる予定。
*参考=2024年度調査で2008年度生まれの接種経験は57.1%
HPVワクチンの接種のきっかけでは、全体で「国や自治体からHPVワクチンに関する情報を提供されたから」が最も高く38.8%だった。そのほかにも、上位では、「情報提供」「周囲の影響」がきっかけとして多く挙がった。
HPVワクチン非接種理由では、全体で「ワクチンの副反応が不安だから」が最も高く、52.6%だった。前回の調査よりも低下傾向だが、接種未経験者の半数以上は「ワクチンの副反応」に不安を感じていた。
HPVワクチンのイメージは全体で「予防効果がある/ありそう」が21.1%と最も高い。
前回はネガティブ意見の「副反応が多い/多そう」が最も高かったが、今回はポジティブな意見がトップになった。
子宮頸がんの認知率は全年代で前回と比較して上昇。定期接種対象では子宮頸がんの認知向上が顕著だった。
HPVワクチンの認知度は定期接種対象では、年代が高いほど認知率も高くなる傾向
いずれの年代においても、HPVワクチンの認知率は子宮頸がんの認知率より低いものの、「名前だけでなく内容も理解している層」はすべての年代で子宮頸がんより高い。HPVワクチン定期接種対象になりたての年代やこれから対象となる年代の認知率拡大が肝要。
子宮頸がんの認知率は全年代において前回と比較しても上昇。
定期接種対象では、HPVワクチンの認知向上が顕著。「どのようなワクチンか知っている」のスコアも、全年代において上昇。
ワクチン非接種理由では、2011年度生まれ以前で効果に関連する項目のスコアが前年より上昇傾向
HPVワクチンの定期接種について、状況は改善しているとみられる。HPVワクチン接種で広範な疼痛や運動障害などの多様な症状が生じた場合の相談支援や適切な医療の提供体制も整えられてきた。
HPVワクチンに詳しい和歌山県立医科大学の上田豊教授(先進予防・健康医学)は「我々の解析とも合致する傾向で信頼できる。背景を含めた今回のような各年代の多数の人を対象にした調査は例がなく貴重だ。定期接種対象では接種率は増加傾向あるが、7割程度だった定期接種前の公費助成の時期の水準には達していない。小中学校や教育委員会などとのさらなる連携強化も必要だろう」と指摘している。