日本対がん協会

村本 高史の「がんを越え、”働く”を見つめる」 第28回 両立支援で大事なこと⑦~つながり

掲載日:2026年6月26日

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 がんの診断後、不安や苦悩を抱えることは多くの人にあるでしょう。これからどう暮らしていこうか。治療と仕事をどう両立していこうか。なかなか答えの出ないことを一人で考えていると、考えは悪い方向に行きがちです。

 これまでの連載でも書きましたが、そんな時に頼りになるのがピアサポート。近年は病院内や患者会に加え、企業の中でもピアサポートのコミュニティが少しずつ広がっています。

 これに関連し、今回はつながりについて考えてみたいと思います。

 

交流会の中で

 5月中旬、WorkCAN’s(ワ―キャンズ)の交流会が東京・恵比寿のサッポロビール本社講堂で開催されました。

 WorkCAN’sは一般社団法人CSRプロジェクトを中心に有志で運営する活動体で、企業内ピアサポートを推進するための研修会などを実施しています。オンライン研修に交えて今年で3回目となるリアル交流会には、企業で働くがん経験者や支援者の方々など、27社60名が集まりました。

 今回の交流会では、企業内コミュニティの事例として株式会社ゆうちょ銀行の取組みを紹介頂きました。「Canゆう会;」と名付けられたコミュニティは、ピアサポートや社内の環境づくりを中心に2年間、活動を進めてきたそうです。一人のがん経験者の思いをもとに発足したコミュニティの確かな足跡は、参加者を大きく勇気づけるものでした。

 発足のきっかけには、私の勤務先であるサッポロビールとのご縁があったこともあり、その後の着実な歩みをお聴きして私自身、感慨深いものがありました。一昨年に制作・発信した「企業内コミュニティ立上げ・運営ガイドブック」(※1)が大きな参考になったとの話も大変嬉しく受け止めました。

 前回のこの連載で「とてもとても」という言葉を取り上げました。一人では、一社ではなかなか踏み出しにくいものも確かにあるでしょう。しかし、同じ仲間同士のピアサポートがあれば、あるいは企業と企業などのつながりがあれば、勇気や希望をもとに歩みを積み重ねていくことができるのだと、改めて思いました。

様々なつながりを活用する

 つながりをつくったり、活用したりする方法には様々なものがあります。参考になりそうな相手に直接アプローチし、相談や意見交換をしたりすることも重要なやり方でしょう。一方で、まず自分の取組みを開示し、自ら飛び込んでみることも充分なきっかけになります。

 企業としてのその一つの方法が表彰への応募です。前述したWorkCAN’sでは、今年から新たな表彰として「WorkCAN’sがんアワード」(※2)を創設します。がんを経験した人が働くことを応援する企業や団体を表彰することが目的ですが、各企業・団体での応援のやり方はそれぞれだと思います。自社の持ち味や強みを活かすやり方がきっとあるのではないでしょうか。

 お互いに学び合いながら、新たなつながりをつくっていくこと。自らを高めながら社会全体の取組みを推進する上でも、つながりが力になることを私は確信しています。

 

※1 サッポロビール「企業内がんコミュニティ立上げ・運営ガイドブック」
https://www.sapporobeer.jp/news_release/0000016851/

※2 WorkCAN’sがんアワード
https://www.workcans-csr.com/award-old

村本高史(むらもと・たかし) サッポロビール株式会社 人事総務部 プランニング・ディレクター

村本高史

1964年東京都生まれ。
1987年サッポロビール入社。
2009年に頸部食道がんを発症し、放射線治療で寛解。
11年、人事総務部長在任時に再発し、手術で喉頭を全摘。その後、食道発声法を習得。
14年秋より専門職として社内コミュニケーション強化に取組む一方、がん経験者の社内コミュニティ「Can Stars」の立上げ等、治療と仕事の両立支援策を推進。
現在はNPO法人日本がんサバイバーシップネットワークの副代表理事や厚生労働省「がん診療連携拠点病院等の指定検討会」構成員、「厚生科学審議会がん登録部会」臨時委員も務めている。