2024年01月15日

お知らせ

【がん相談ホットライン 2022年度のまとめ】相談件数9124件 前年度から1900件増加

がん患者や家族などから無料で相談を受ける「がん相談ホットライン」の2022年度の年報がまとまりました。

 

2022年度のまとめ

 

2022年度の相談件数は9124件。2022年4月から祝日も窓口を開き、新型コロナウイルス感染症が広がる前の2019年度には及ばないまでも、2021年度比で1913件増えました。月別の相談件数では10月の889件が最も多くなりました。

 

■年度別相談件数

年度別相談件数グラフ
 

■月別相談件数

年度別相談件数グラフ

※22年度以前の月別相談件数は、「データで見る、がん相談ホットライン」よりご覧いただけます。

 

相談者の男女比率は、女性が78.4%(7155件)、男性が21.6%(1969件)。年代別では、50代が36.0%(3285件)と最も多く、次に60代18.2%(1657件)、40代17.3%(1574件)、70代10.3%(941件)などの順になっています。
 
相談者の続柄は、患者本人が70.6%(6446件)で最も多く、次に娘10.6%(963件)、妻5.3%(480件)などの順で、例年と同じ傾向になっています。
相談を受けた疾患部位は、乳房29.5%(2696件)、腎・尿管・膀胱10.7%(980件)、大腸9.1%(833件)、肺7.7%(699件)が多くなりました。腎・尿管・膀胱については頻繁にかけられた方がいたことが影響しています。
 
相談は全国、海外から寄せられています。相談者の承諾を得て居住地域(都道府県別)を聞いたところ、首都圏を中心に人口やがん診療連携拠点病院が多い地域からの相談が多いことがわかりました。
 
相談内容は一度の相談に複数の問題が絡んでいる場合が多く、相談員は複数の項目を選択できるようにしています。その中で最も比重の高い項目を集計すると、「症状・副作用・後遺症」が23.9%(2180件)と最も多く、次に「がんの治療」が21.2%(1931件)、「不安・精神的苦痛」に関する相談が17.7%(1618件)と続きました。「グリーフケア」の相談も1.8%(164件)ありました。
 
一方、相談項目をすべて集計した場合、最も多い相談は「不安・精神的苦痛」で5438件。次いで「症状・副作用・後遺症」3782件、がんの治療」3193件などの順になりました。この結果から、どんな相談にも根底には不安があるといえそうです。
 
本人と家族(配偶者、親、子、兄弟姉妹)では相談内容に違いがありました。本人からの相談は「症状・副作用・後遺症」が最も多く、家族からの相談は「がんの治療」が多くなりました。ただ、どちらも「症状・副作用・後遺症」「不安・精神的苦痛」「がんの治療」の相談が上位3位を占めたことは共通しています。
 

グラフ(どんな相談が多いですか?)
グラフ(相談の疾患部位)

※相談者の続柄、年代のグラフは「データで見る、がん相談ホットライン」よりご覧いただけます。

 
 

新型コロナに関する相談

 

2022年度の新型コロナウイルス感染症に関する相談は782件で、全相談件数に占める割合は8.6%でした。月別で最多は8月の103件。ホットラインでは、国内初の感染者確認が報道された2020年1月16日以降、新型コロナに関する相談が続いています。

 

患者は治療中の方が最も多く、経過観察中の方、精査中の方の順。相談内容のすべての項目を集計した結果、「その他」が218件と最も多くなりましたが、うち124件が新型コロナのワクチン接種に関する相談でした。次いで「面会」155件、「治療」122件、「感染や重症化の不安・恐怖」105件、「症状」104件などが続きました。

 
グラフ(コロナ関連の相談内容件数)
 

ワクチンに関する相談は、接種するか否かをはじめ、接種のタイミング、がん治療への影響、接種後に出現した症状がワクチンによるのか、がんの影響かなど様々ありました。
また、「面会」に関する相談では、感染拡大当初から病院が面会制限を行っているため、依然として「面会できなくて様子がわからない」「会えなくてつらい」といった相談が多くなりました。
 
「治療」に関する相談は、患者・家族が感染または濃厚接触者になり、治療が延期になったという相談、コロナ感染で治療が遅れるのではないかという不安を訴える相談が多くなっています。「感染や重症化の不安・恐怖」の相談は、コロナ発生当初から多く寄せられています。
 
「症状」に関する相談は、前年度の34件から大幅に増加。多くは患者自身がコロナに感染したことで、出現している症状がコロナによるものか、がんの症状か分からないという不安、がんが進行したのではないかという不安でした。
 
「その他」に含まれる相談には、「医療者との関係」に関する相談も多く、面会制限や通院の人数制限によって、担当医と十分に話ができない、担当医に質問ができないという声が多く聞かれました。また、面会ができないために在宅療養にするか否か迷うという「在宅」に関する相談も増えました。

 
 

気になった相談

 

ひとりっ子や兄弟姉妹と疎遠な人ががん患者の親を支える際、いろいろなことを一人で決めなければならない重圧がかかり、どうしていいかわからず困っているという相談があります。
 
相談者の年代は40~60代が多いですが、10~30代の若い世代もいます。親を失うかもしれない恐怖や、親ががんになったことを受け入れられない気持ち、何とか助かってほしいという必死な気持ちが特に強い傾向にあります。また、学業や仕事に影響して自分の人生が大きく変わってしまいそうな不安を抱えています。誰かに相談したくても、友人の中に経験者はほぼいないため、気持ちを共有できる人がいない孤独感、つらさがあります。
 
一方、40~60代以上は社会的な経験もあるためか、どうやって治療を決めたらいいか、何に気を付けて治療したらいいか、治療費や療養費、相続などのお金のこと、介護や療養場所など、具体的な相談が多くなっています。自分がやらなければという責任感や、医療者側から治療などの重要な決定を委ねられて誰にも相談できず抱え込み、疲弊しているように感じられます。
 
親とのコミュニケーションが取れる場合は、どのように話し合っていくかを相談員も一緒に考えます。コミュニケーションがうまく取れない場合は、元気なころの親との会話から感じた親の価値観や人生観を思い出してもらうこともあります。また、主治医や他の医療者、周囲の信頼できる誰かに、遠慮なく相談すると良いと伝えています。

 

ホットラインでは、個々の悩みにともに向き合い、考え、問題解決の糸口を探しています。さらに、その人にとって必要で身近な支援先を見つけ、一緒に支えてくれる自分のチームを作ることでその重荷を少しでも軽くできればと考え、対応しています。

 
 

相談者からの感謝のことば

 

抗がん剤治療の副作用が怖い方

副作用が怖くて、治療する勇気がなかった。ホットラインに相談したことで、問題が起きたらその都度主治医や医療者と相談していけばいいと思えた。

我慢のし過ぎで治療を
頑張る気力がなくなっていた方

電話をかける前は、相談しても仕方がないと思っていました。でも、知らない人だと辛いって話せるんだなぁと思いました。聞いてくれてありがとう。今度からつらい時はつらいって話すようにします。

これからがん治療が始まる方の妻

がんの疑いで受診したのに、すぐ治療が決まってしまい混乱して電話した。これからの事をイメージできるように説明してもらい、気持ちが落ち着いた。相談できる場所が見つかってほっとした。これからのことにひとつずつ向き合いながら、夫婦一緒に乗り越えていこうと思うので、また相談させてほしい。

副作用が思うように
改善しなくて悩んでいた方

治療が終わったのに、副作用がなかなか良くならなくて焦っていました。身体の回復にはある程度時間がかかるものだとわかったので、もう少し辛抱してこの身体と付き合うことにします。そう思えるようになって、気持ちが楽になりました。

親の主治医と意見が合わず
興奮気味に電話してきた方

親の治療方針で、医師と意見が合わず困っていた。話をしながら気持ちが落ち着き、自分の気持ちを整理しながら話すことが出来た。今後も相談したい。

長く続く治療に疲弊していた方

明日の受診を思って気持ちが落ちこんでいたが、話していたら楽になりました。多分もう大丈夫です。明日頑張って病院に行ってきます。

がんになった友人との関係性に悩む方

がんになった友人とどう付き合っていくか悩んでいた。話しを聞いてもらったことで、自分がどうしたいかということに気がついてすっきりした。

グリーフケア

夫が亡くなってからずっと元気がない自分に、友人が心配してホットラインを教えてくれた。電話して良かった。気持ちが楽になりました。

 

ホットラインの受付時間は年末年始を除き、毎日午前10時~午後1時と午後3時~午後6時。相談時間は20分程度(目安)。予約不要で、相談者・相談員ともに匿名で実施し、看護師や社会福祉士が相談に応じています。

電話番号:03-3441-7830