日本対がん協会

がん患者・家族の生成AI利用状況に関する調査報告

2026年6月18日

発表のポイント

  • 生成AIの利用率は、がん患者本人6.7%、家族7.5%
  • 生成AIの役割では、「情報を分かりやすく説明・要約・比較検討してくれる」が最も高く62.4%
  • 生成AIの情報に誤りがあると感じたことがあるがん患者は66.2%
  • 生成AIの利用によるポジティブな影響を受けた人は7割
  • がん患者本人の診断後の期間が短いほど生成AIの利用率が高い傾向

調査の背景

近年、生成AIの利用が急速に拡大している。2025年度の総務省「情報通信白書」によると、2024年度の調査で「生成AIを使っている(過去に使ったことがある)」と回答した人の割合は26.7%と、前年度の9.1%から大きく増加した。一方、現状では生成AIには誤情報や情報の偏りといった課題があり、こうした特性を認識せずに病状に関する悩み相談などで生成AIを利用するがん患者・家族が少なからずいることが、協会の無料電話相談「がん相談ホットライン」に寄せられた声からうかがえた。
そこで協会は、がん患者・家族の生成AIの利用実態を明らかにし、正しい認識のもとで適切に生成AIを利用したり、信頼できる情報源・相談先へのアクセスを支援したりすることを目的に、本調査を実施した。

調査の概要

公益財団法人日本対がん協会(垣添忠生会長)は、2026年3月23~26日に全国の15~89歳のがん患者や家族約1万人にインターネットを通じて、調査を行った。そのなかで直近1年以内にがん治療を受けている患者と家族で、AIを利用している対象者計427人には、質問を追加して利用方法を調べた。

調査の主な内容

各情報源の年代別の認知率と利用状況

生成AIの利用率は、がん患者本人で6.7%、家族で7.5%という結果となり、30代で最も高い結果となった。生成AIの認知率は、生成AIの認知率は本人が36.7%、家族が44.6%で、60代以下で高かった。医療従事者への相談は本人が47%、家族が42%、インターネットサイトが30%程度と高かった。

がん患者・家族はどのような情報源・相談機関を認知しているか

がん患者・家族はどのような情報源・相談機関を利用しているか

生成AIの利用頻度

がん患者本人は、「2~3か月に1回以下」が最も高く、24.9%。次いで「月に1回程度」19.2%、「週に1日程度」17.8%。平均利用回数は1.3回/週だった。
がん患者家族でも、「2~3か月に1回以下」が最も高く、23.8%。以下、「週に1日程度」「月に2~3回程度」「月に1回程度」がいずれも15%程度。平均利用回数は1.5回/週だった。

生成AIに相談する内容

がん患者本人は、「がん治療に関する情報」が最も高く、62.9%。次いで「症状・副作用・後遺症のこと」60.6%。がん患者本人は「症状・副作用・後遺症のこと」が家族よりも8.7ポイント高くなっている。

生成AIを利用する理由と使わない理由

生成AIを利用する理由では、がん患者本人では「すぐに調べられる/相談できるため」が最も高く62.2%。「無料で利用できるため」55.3%、「好きな時に利用できるため」「人に聞きにくいことも気軽に質問・相談できるため」がそれぞれ49.6%と、上位には利便性に関する理由が並んだ。家族も同様の傾向だった。

一方、生成AIを利用しない理由としては「医学的に信頼できる情報か不安」「医療機関の説明と異なる情報が含まれる可能性がある」など正確性・信頼性に関する理由が多く上がった。

生成AIの誤情報を認識しているか

直近1年以内にがん治療を受けたがん患者と家族で、生成AIを利用する対象者への追加質問では、「生成AIの情報が誤っていると感じた経験率は66.2%。なかでも「数回ある」が37.6%、「何度もある」が23.9%と、過半数を超える結果となった。
また、生成AIの情報が誤っていると感じた理由について自由回答で尋ねたところ、「質問の仕方を変えると異なる回答が返ってきた」 「生成AIからのアドバイスを試した結果、うまくいかないこともあった」といった声が寄せられた。

生成AIによる行動変容

生成AIによる行動変容では、患者・家族ともに「病気や治療についての理解に深まった」ががん患者・家族とも4割程度、「受診や相談の際の事前準備がしやすくなった」が3割程度で、計7割の患者・家族がポジティブな行動変容ととらえる実態もわかった。
自由回答では、「人に相談しづらかったことを調べて不安が和らいだ」「主治医に対する会話・質問がしやすくなった」 「医療者に対して一段踏み込めるようになった」 「副作用について調べた後、体調の変化により気付けるようになった」といった前向きな声が寄せられた。一方で、「知識が増えて逆に混乱した」「医師との話と逆で不安になった」「病院にいかなくなった」といった声もみられ、生成AIの活用には利便性とともに情報の正確性や信頼性に対する懸念もあることがうかがえた。

治療期間別の利用状況について

がん患者本人の利用状況を治療期間別で確認すると、今回の調査で「初診」「再発」のがんの区分けはしていないものの、3カ月未満のがん患者本人の利用率が高く、治療期間が短いほど利用率が高くなる傾向がみられた。

まとめ

今回の調査では、がん患者と家族がニーズに応じて相談先を使い分けている状況が浮かんできた。生成AIと医療従事者への相談理由を比較すると、生成AIは「すぐに調べられる」「無料で利用できる」といった利便性の面で、医療従事者は「医学的に信頼できる」「具体的なアドバイスが得られる」といった信頼性や専門性の面で、それぞれの強みに期待していることがうかがえた。一方で、「医師の説明と異なる情報に不安を感じた」といった声も見受けられ、生成AIはがん患者・家族にとって有用な情報源となる可能性があるものの、活用にあたっては情報の正確性や信頼性に十分な注意が必要であることが示された。

さらに、がん患者本人の生成AI利用を治療期間別にみると、治療期間が3カ月未満の患者で利用率が高く、治療期間が短いほど利用率が高くなる傾向がみられた。本調査では「初発」「再発」の区別を設けておらず、さらに回答数を増やした調査が必要なものの、診断直後や治療初期の「わからないことが多い」段階において、生成AIが利用されやすい可能性が示唆された。

生成AIに詳しい慶應義塾大学医学部の宮田裕章教授は「利用率7%程度というのは、がんの罹患年齢を考えても、全体の利用から見れば一見低い数字にも見えるが、がん患者さん、家族が全体のなかで使っているということ自体がかなり重要な状況にある」と話した。また、3カ月未満のがん患者本人の利用率が高い傾向だったことについては、「サンプル数はまだまだこれからにしても、3カ月は不安を感じ、最初の判断に迷って情報を必要としている時期。AIを利用した初期の判断で、間違った治療方針が強烈にゆがめられ、その結果としてがんが進行して命を失うことすら可能性としてある。この時期は、医療政策にかかわる専門家も含めて考えることが改めて重要なフェーズということではないか」と指摘している。

日本対がん協会では、がん患者・家族の生成AIの利用実態について、今後も継続的に追跡していく予定です。

がん相談ホットラインから

がん相談ホットラインを開設して20年でがん治療は進歩し、患者さんやご家族を取り巻く環境も変化してきました。その中で近年の大きな変化としてあげられるのが、生成AIの利用です。

がん相談ホットラインでは、生成AIの回答がすべて正しいわけではなく、自分に当てはまる情報とは限らないことを伝えて、治療や病状に関わる医学的なことは担当医に確認することが大切だと話をします。ただ、担当医とのコミュニケーションに問題があって、AIを利用している人も少なくありません。その際は、どのようにしたらその人が担当医に質問できるようになるかを一緒に考え、相談内容によっては、担当医以外の適切な相談先もお伝えしています。

今後ますますAIは進化し、誰もが当たり前のように利用する世の中になっていくことが予想されます。それでも私たち相談員は、人と人が対話を重ねて心を通わせることが、その人の心の回復や元々持っている力を引き出すことにつながっていくことを実感しています。

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