がん検診の推進
日本のがん検診の現状
がんを治すには、早期発見と適切な治療が何より重要です。そのためには、定期的にがん検診を受ける必要があります。
しかし日本の検診受診率はまだまだ低く、欧米の受診率が70~80%と言われるのに対し、肺がんを除けば日本は50%にも満たない状況です。また、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年のがん検診受診者が大幅に減り、発見がん数が減る恐れがあることを、支部へのアンケートを元に対がん協会報などで発信し、それを大手メディアが報じました。当協会では、受診率を向上させるため、さまざまな取り組みを行っています。
男女別がん検診の受診率の推移(40〜69歳)
出典:2019年国民生活基礎調査(2016年は熊本県は含まない)
日本対がん協会グループの検診
日本対がん協会の各地の支部では、胃、大腸、肺、乳房、子宮頸などのがん検診を行っています。年間でのべ1千万人以上が受診しており、対がん協会発足以来の累計受診者数は4億人を超えています。これは住民検診の実施機関としては日本最大の規模です。
検診車
写真提供:千葉県支部
(公益財団法人ちば県民保健予防財団)
日本対がん協会グループのがん検診実施状況(2022年度抜粋)
日本対がん協会の道府県支部のうち、42支部でがん検診を行なっています。
[のべ受診者数]986万5397人 [がん発見数]12,083件 (約0.1%) |
部位 | 実施団体数 | 受診者数 | 前年度比 | がん発見数 | がん発見率(%) ※2 |
胃がん※1 | 42 | 1,699,368 | -7,623 | 1,689 | 0.10% |
子宮頸がん | 42 | 1,111,922 | -23,844 | 142 | 0.01% |
乳がん | 42 | 1,095,875 | -26,733 | 3,148 | 0.29% |
肺がん | 42 | 2,798,244 | 54,262 | 1,243 | 0.04% |
大腸がん | 42 | 2,353,022 | 74,635 | 3,814 | 0.16% |
子宮体がん | 12 | 17,721 | 85 | 36 | 0.20% |
甲状腺がん | 2 | 825 | -33 | 1 | 0.12% |
前立腺がん | 36 | 419,036 | 21,528 | 1,865 | 0.45% |
肝胆膵腎がん | 19 | 294,731 | 7,519 | 145 | 0.05% |
合計※1 | 9,865,397 | 99,886 | 12,083 | ー |
※1内視鏡検査を含む
※2がん発見率とは…がん発見数÷受診者数=がん発見率
-【5大がんは913万3084人】肺・大腸は増、胃・乳房・子宮頸部は減
42支部が2022年度に実施したがん検診は胃、子宮頸部、乳房、肺、大腸、子宮体部、甲状腺、前立腺、肝胆膵腎の九つで、計986万5397人が受診しました。国内で新型コロナウイルス感染症の感染初確認後にあたる2020年度の889万1958人、2021年度の976万5511人から回復傾向にありますが、2019年度の1088万130人を9%下回り、コロナ禍の影響が続いているとみられます。
がん死亡率を低減させるという科学的根拠に基づき、国が推進している五つのがん検診(胃、肺、大腸、乳房、子宮頸部)の受診者は、2022年度が913万3084人で、2021年度の906万2369人を上回りました。
2021年度比で、肺がん検診は1.9%増、大腸がん検診は3.1%増でした。一方で、胃がん検診は0.4%減、乳がん検診は2.4%減、子宮頸がん検診は2.1%減となりました。
-5つのがん検診受診者数の推移(2019年~2022年)
「がん検診年次報告書」の刊行
日本対がん協会は毎年、各支部の検診実施状況を「がん検診年次報告書」にまとめ、1967年から刊行しています。2022年度版の報告書には21年度のがん検診実施状況と、20年度の検診受診者を追跡調査した結果などを収録しています。
受診率向上や新しい検診手法の開発をめざして
写真提供:埼玉県支部
(公益財団法人埼玉県健康づくり事業団)
国立がん研究センターや大学などの研究機関と協力し、がん検診の受診率向上や課題の探索、新しい検診手法などの開発に向けた研究助成事業に積極的に取り組んでいます。
受診率向上策の実証事業
日本対がん協会は厚生労働省がPwCコンサルティング合同会社に委託した「予防・健康づくりに関する大規模実証事業・がん検診のアクセシビリティ向上策等の実証事業」の実証事業者に採択されました。国立がん研究センター、(株)キャンサースキャン、(株)プロセシングなどと協力し、がん検診の受診率向上にはどのような手法が効果的かを集約、検証する事業を進めてきました。
受診率向上施策ハンドブック
実証事業では、行動経済学の「ナッジ理論」やソーシャルマーケティングなどを取り入れてつくった資材などをもとに、支部や自治体とともに受診勧奨を実施、効果を分析しました。また、全国自治体にアンケートを実施し、効果的と考えられる施策の実施状況と受診率の関連を調べました。3年間の実施事業の内容をもとに、チェックリストとその留意点を含めた「受診率向上施策ハンドブック」をまとめ、厚労省に報告し、ウェブ上で公開されました。
さらに、こうした成果をもとに、各市町村に受診勧奨計画をつくってもらう厚労省の「令和5年度がん検診の受診勧奨策等実行支援事業」(2023年度)に公募し事業者に採択されました。
がん検診研究の基盤向上へ
当協会では、がん検診研究の向上に向けた助成事業を進めています。がん検診技術の開発に向けた基礎や臨床研究、受診勧奨技術の向上や、受診率アップへの課題を探る社会調査など幅広い分野を対象に、研究基盤の全体的な底上げを目標にしています。
検診無料クーポン利用者
アンケートから見る受診行動
クーポン受診者の
過去の受診歴
〈大腸がん〉
毎年受診
40%
昨年も受診
12%
3年以上ぶりに
受診24%
2年ぶりに
受診13%
初めて受診
11%
クーポンを利用し検診した半数が
未受診者、検診控え層
アンケートは日本対がん協会が2022年9~12月にがん検診デジタル無料クーポンを配布した1万4058人を対象に実施したもので、3816人が回答しました。その中で受診歴を聞いたところ、大腸がん検診では「初めて受診した」「3年以上受けていなかった」「2年ぶりに受診した」と回答した未受診者、検診控え層が半数近くを占めました
。
一方、国の指針通り年1回、定期的に受診している人も約半数いました。
最終更新日:2024年9月24日