私のがん検診体験

「がん検診で早期がんが見つかれば、ラッキー」と思うくらいの気持ちで。
昨年10年ぶりに人間ドックを受けて、早期胃がんを発見。本年5月に手術を受け、今はいたって健康という鳥取県在住の徳永 忠顯さんにお話をお伺いしました。
 
――徳永さんは、2018年、久しぶりに受けた人間ドックで、胃がんが早期に発見されたということですが、今の状況と当時の状況をお聞かせいただきたいと思います。
 
徳永 昨年10年ぶりくらいに受けた人間ドックの内視鏡検査で、早期の胃がんが見つかりました。その後、鳥取大学医学部附属病院を紹介してもらい、そこで手術支援ロボットの「ダビンチ」で胃の部分切除手術を受けました。同病院は、人口15万人の鳥取県米子市という地方都市にありながら、「ダビンチ」による手術で1000例近くの実績がありましたので、安心して任せることが出来ました。今は胃の方は何の問題もありません。胃を切除した後に出る後遺症の一つである低血糖症がたまに出るものの、今はいたって健康で普通の生活を送っています。
 
人間ドックを受けたのが2018年12月26日です。実は、10年前までは毎年人間ドックを受けていました。この10年間、自分はすごく健康だと自負していまして、人間ドックは受けていなかったんです。ところが昨年、現役を退いたので社会保険から国民健康保険に切り替えた際に、米子市から人間ドックの案内が送付されてきたことと、自分がよく行くテニス場の近くにある病院の「人間ドック」の看板を見て気になっていたこともあり、重い腰をあげて人間ドックに行きました。特別どこかが悪いと思って検査に行ったわけではありません。健康そのもの、と思っていましたから。ただ、日本対がん協会のAC広告「がんは万が一ではなく二分の一」、あれは非常に私の中で響いていました。
 
 
――いままでにがん検診は受診されていましたか?
 
徳永 がん検診というよりは標準的な人間ドックは継続的に受けていました。
 
 
――これまで生活のなかでがんを、ご自身のこととして意識したことはありましたか?
 
徳永 自分は至って健康であると思っておりましたので、自分自身が「がん」になるとは考えもしませんでした。加入していた生命保険が満期になったのを機会に、がん保険を追加したくらいです。
 
 
――がんと告知された時は、どんなふうに受け止めましたか?
 
徳永 人間ドックで胃カメラを撮った時に、先生が「胃の組織を採りましたが、もし検査で何かわかれば電話させていただきますね」と言われました。この一言でおそらく、がんかもしれないと心の準備ができました。今でもその先生の対応には感謝しています。すぐ手術ということになりましたが、主治医の先生を信頼していましたので、不安はなかったです。
 
 
――ダビンチによる手術痕も見せて頂きましたが、胃がんの手術の痕とは思えませんね。
 
徳永 はい。もっと大きな傷跡を想像していました。実は、一昨年前まで私は体重が110キロあったのですが、その当時のままならダビンチでの手術はできませんでした。偶然、一年かけて減量して今のように85キロまでやせたのが良かったのです。
腫瘍は胃の粘膜の中にあり、よく検診で見つかったなあと内視鏡専門の先生が感心していました。手術前に、今でも正確な腫瘍の場所が特定できていないので、術中に部分切除から全摘に変えるかもしれないと説明がありました。
10日で退院することができましたが、点滴などは5日間で外れたので、その後は退屈でした。
 
 

――もし米子市から人間ドックの案内がなく、「人間ドック」の看板を見ることがなければ、人間ドックにはいかなかったでしょうか。それとACのCM。
 
徳永 行かなかったかもしれませんね。もし行っていなければ、がんがもっと進行して初めて分かったかもしれません。
 
 
――私たちも、より多くの方が自分や家族のためにもがん検診に行っていただきたいと思い、AC広告を制作したり、様々な活動を通じてがん検診の推進をしています。しかし、がん検診の受診率はそれほど高くありません。なぜだと思いますか。
 
徳永 抵抗感や面倒くささ、そして忙しさなどが理由でしょうか。
あとそもそもPRの方法も考えた方がいいと思います。私は検査によって偶然早期がんが見つかったので、このことを今後いろんな人たちに広めていきたいと思います。がん検診で早期がんの発見につながった人たちの声をもっと有効活用していくべきだと思います。
 
 
――以前あるイベントでがん検診になぜ行かないのですか?と質問したとき、「がんが見つかると怖いから」と答えた方何人かいました。この意見についてどうでしょうか。
 
徳永 大きな間違いだと思います。私自身人間ドックに行っていなければ、こうしてゆっくり家でお茶を飲んでいられなかったかもしれません。検診でがんが見つかることを怖がるのではなく、見つかったら「ラッキー」と思うくらいの気持ちでがん検診に行ってほしいと思います。私たち夫婦の間では、あと一年検診に行かなかったらどうなっていたかとよく話をします。自分のことはもちろんですが、家族のことを考えると行くべきでしょうね。
 
 
――これからは自身の体験をもとにがん検診の定期検診の普及推進を実施していきたいとのことですが。
 
徳永 はい。私はいつでも自分の体験として情報を提供していくつもりでいます。地元鳥取のリレー・フォー・ライフや近隣県のリレー・フォー・ライフを通じて自身の体験からくるがん検診の重要性を説くことを使命だと思って情報を発信していくつもリです。もし今の私に何かあった場合、それで風化することのないよう、若い人たち、大学生の人たちにもがん検診の大切さを浸透し、若い人や学生が継続的かつ主体的に検診の必要性を訴え続けてくれればいいと思います。