中期計画(2018~22年度)

◆中期計画策定にあたって

日本対がん協会はがん征圧を目的に、1958年に設立されました。その後、がん死亡者・罹患者は増え続け、厚労省人口動態統計によると、2016年のがん死亡者は37万2986人で過去最多となっています。罹患者についても、国立がん研究センターは17年、過去最多の101万4000人が新たにがんになると予測しています。予防や早期発見、治療の進歩で年齢調整死亡率は年々減少しているものの、国民の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなっているのが現状です。がんは今でも最も身近な国民病といえるでしょう。
こうした状況に対し、2006年にはがん対策基本法が制定され、07年度からがん対策推進基本計画が3期にわたって策定され、がん対策は進んできました。13年にはがん登録推進法が成立し、16年にはがん対策基本法が改正され、患者が安心して暮らせる社会構築が理念に盛り込まれました。しかし、2007年度から10年間の目標として打ち出された75歳未満の年齢調整死亡率20%削減は達成できず、協会がグループ支部と共に強く訴えてきたがん検診受診率50%目標も、男性の肺がん検診を除いて達成できていません。がん征圧にはまだ程遠い状況です。
18年度は創立60周年にあたります。がん征圧の国民運動をさらに進めるため、協会は2018~22年度の中期計画を策定することにしました。この計画期間は、国の第3期がん対策推進基本計画と同じ計画年度です。また、2030年を目標に「すべての人に健康と福祉を」を掲げた国連のSDGs(持続可能な開発目標)の活動にも合わせます。

◆全体目標

「がんに負けない社会をつくる」という大きな目標のもとに、①禁煙をはじめとするがん予防、がん検診(二次予防)を進めるための科学的根拠に基づく「がん予防・がん検診の推進」、②患者ががんと共生して暮らせるための「がん患者・家族の支援」、③がん教育を全国に広げ、がんの正しい知識を広めるための情報発信、研修・研究支援活動を通じた「正しい知識の普及啓発」を柱として掲げます。

◆支部などと連携

目標達成のためには特にグループ支部との連携が欠かせません。がん検診推進はもちろん、禁煙推進、患者支援、普及啓発活動などで幅広く連携します。支部以外でも、多くの患者団体、医療団体、学術団体などと共に、がん征圧を目指します。

【1】がん予防・がん検診の推進

《1―1》がん予防推進

がん予防の中心は禁煙推進です。協会は2003年に禁煙宣言を発表し、啓発活動や政府への働きかけを強化してきました。しかし、成人喫煙率は07年の24.1%から15年には18.2%に減少したものの、22年度12%の達成は難しい状況です。そこで以下のような活動を軸に、禁煙推進活動を再構築します。


・「グローバルブリッジ」との提携事業

 グローバルブリッジは米国の禁煙推進団体で、多額の助成金配分を通じて各国の禁煙推進活動などに貢献しています。協会は2016年、同団体と契約を結び、17年には国内の助成金配分先16団体を決めました。この事業は19年末までで、協会は助成先団体を支援し、事業終了後も禁煙支援体制の拡充に努めます。

・各種イベント開催・広報

 世界禁煙デー行事などの各種イベントや、禁煙推進に加えて適度な運動や体重維持などを勧める「がんを防ぐための新12か条」を積極的に広報します。

・新禁煙宣言、厚労省や自治体への提言

 2003年の禁煙宣言から15年たつことから、新たな禁煙宣言を作り、発表します。あらゆる公共の場所での受動喫煙防止を目指して医師会、支部、禁煙推進団体などとともに、署名活動や要望書提出などを行います。新型たばこ対策についても研究し、新型たばこでは根本的解決にならないことを訴えます。

がんを防ぐための新12か条

公益財団法人がん研究振興財団「がんを防ぐための新12カ条」より

《1―2》がん検診推進

協会はグループ全体で毎年度、延べ1千万人以上のがん検診を実施してきました。しかし近年、受診者の高年齢化が目立ちます。また、国全体でみると、検診受診率は男性の肺がん検診を除き、目標の50%に到達していません。精検受診率については現在、国全体で65~85%、支部で70~90%となっています。これらの数値を引き上げるため、支部と共に、がん検診推進活動をさらに強めます。

受診率向上・受診者拡大

受診率向上の成功モデルを各支部に普及します。特に未受診者の掘り起こし、一度受けた人の定期受診化を進めます。18年度夏以降、受診率向上を狙ったAC広告を全国展開します。無料クーポン配布、ポスター・リーフレットを使った啓発も続けます。

精度管理向上

厚労省は第3期がん対策推進基本計画で精度管理の目標90%を掲げました。協会としても目標達成に力を入れます。支部の精度管理担当者を対象としたアンケート、研修会を開きます。

新たな検診手法の情報収集・研究

がん検診の今後のあり方について、情報収集や研究を進めます。血液バイオマーカーを使ってすい臓がんの早期発見を目指す臨床研究には引き続き関わります。血液検査によるがん検診の動向に注目し、最新情報を支部に提供するとともに、支部の検診基盤を生かし、臨床研究にも積極的に関わるようにします。乳がんリスク層別化事業、高齢者のがん検診研究は引き続き実施します。

【2】がん患者・家族の支援

《2―1》リレー・フォー・ライフ


がん患者や家族支援のためのチャリティー活動で、2007年に兵庫県芦屋市で開催して以降、2017年度は全国37都道府県、49カ所開催になりました。2022年度までに全都道府県で計65カ所開催を目指します。
夜通しのウオークでは若い世代、特に学生の力が必要です。川越(埼玉)のように地元大学に大学ぐるみで参加してもらったり、滋賀医大で開かれたような「カレッジリレー」を増やしたりします。協会の代理人でもあるスタッフパートナー・ブロックスタッフの増員も図ります。

《2―2》無料がん相談

協会は2006年度、これまでの無料医師相談に加え、無料電話相談「ホットライン」を始めました。同年度1370件だったホットライン相談件数は年間1万件を超えています。患者や家族の悩みを十分受けていくために、今以上に相談内容の分析を深め、相談者のニーズを把握して質・量の向上を目指します。22年度までにデータベースの再構築を図り、有益なシステムに改良します。

《2―3》がんサバイバー・クラブ

2017年度、Web上に「がんサバイバー・クラブ」を発足させ、患者会、イベント、がん関連の情報、サバイバーのストーリーなどの提供、サバイバーの就労支援相談を行ってきました。今後もメルマガやSNSを充実させ拡散することにより、認知度を高めます。Web上の活動だけでなく、患者とのリアルイベントにも力を入れます。

《2―4》ピアサポート、他の患者支援活動

協会は2013年度、厚労省からの受託事業でピアサポーター養成の冊子、DVD、運用マニュアルを作りました。18年度からは他の患者会、支援団体、支部と協力して、ピアサポート事業の拡大を図ります。ピアサポーターの養成講座だけでなく、活躍場所の開拓や、ピアサポーター同士のネットワーク構築などに乗り出します。他の患者団体への助成・支援や患者向けセミナーも行います。

【3】正しい知識の普及・啓発

《3―1》ピンクリボンフェスティバル

乳がんの早期発見、早期診断、早期治療を訴え、2003年度にスタートさせました。目標である乳がん検診受診率については、徐々に向上し、厚労省の国民生活基礎調査によると、開催地のひとつ宮城県で過去2年に受診した人の割合は50%を超えました。しかし全国平均は40%台にとどまっており、さらに力を入れる必要があります。特に若い世代への注意喚起を重視し、乳がん患者支援を訴えながら、費用対効果を重視した開催方法を模索します。

《3―2》がん教育

2009年から小中高校生へのがん教育に着手し、全国の学校でがん教育モデル授業を開いたり、がん教育の副教材を作成したりしています。文部科学省は2017年度から、がん教育の全国展開、学習指導要領へのがん教育記載を打ち出しました。協会は教育現場で、教師ががんについてスムーズに教えられるような副教材や指導書の作成、さらにモデル授業実施に引き続き力を入れます。

《3―3》がん征圧月間

協会は1960年以降、毎年9月を「がん征圧月間」と定め、支部と共にがん征圧キャンペーンを行ってきました。その中心となる「がん征圧全国大会」は1968年から各都道府県持ち回りで開いています。2018年は千葉県、19年は愛媛県、20年は宮崎県で開催します。表彰事業も実施します。18年は協会創立60周年にあたるので、11月に東京で60周年記念大会を開きます。

《3―4》各種セミナー開催


・ほほえみ基金を生かしたセミナーなど
 乳がんをなくす「ほほえみ基金」への寄付を生かし、ピンクリボンフェスティバルと重ならない事業としての
 美容セミナーを開いたり、企業提携によるセミナーを開いたりします。
・UICC日本委員会や学会との連携セミナー
 国際対がん連合(UICC)日本委員会と連携したシンポジウム、癌学会と共催での市民公開講座、癌治療学会
 と連携した活動を引き続き行います

《3-5》刊行物・Web展開

月間の「日本対がん協会報」、冊子「がん読本」、がん検診の案内リーフレット、乳房自己触診の解説リーフレット、がん征圧を訴えるポスターなど、様々な刊行物を引き続き発行します。冊子やリーフレットについては、支部などにアンケートをして、要望の強いものを作成します。
デジタル・Web広報については18年以降、専門の担当者を置いて発信力を高めます。ホームページ改修やスマホでの画面改修にも着手します。

《3―6》研修、研究助成など

協会は従来、マンモグラフィー研修、乳房超音波研修、診療放射線技師研修、保健師・看護師研修、内視鏡研修などを実施してきました。支部や自治体の要望を聞きながら、引き続き実施します。
また、協会は創立直後から奨学医制度を設けて、がん専門医育成に取り組んできました。2010年度からは海外奨学医を始め、17年度まで計18人の奨学医を、米国・MDアンダーソンがんセンター、シカゴ大医学部に研修派遣しています。2012年度からは、がん研究や患者支援研究への新たな助成制度「プロジェクト未来」を発足させ、これまでに計90団体・個人に助成してきました。今後、助成先や制度の内容を検討しながら、実施します。