朝日がん大賞・日本対がん協会賞

「朝日がん大賞」は日本対がん協会賞の特別賞として、朝日新聞社の協力で2001年に創設されました。対象分野は、日本対がん協会の活動の柱である「がん予防」全般とし、がん征圧に向けて優れた実績をあげて社会に貢献し、かつ、第一線で活躍している個人・団体を顕彰します。将来性のある研究の発掘、医療機器類の研究・開発、患者・治癒者の活動やケアなどの分野も対象としています。
 
「日本対がん協会賞」は対がん活動に顕著な功績のあった個人及び団体を顕彰して、がん征圧運動の一層の高揚を図ることを目的としています。
 


朝日がん大賞

 
2021(令和3)年度の受賞者
 

「長年にわたるがん患者支援活動と患者代表としての意見発信」

天野慎介(あまの・しんすけ)47 歳一般社団法人 グループ・ネクサス・ジャパン 理事長
 
天野氏は 1973 年東京都生まれ。27 歳のときに血液がんである悪性リンパ腫と診断され、薬物療法、放射線療法、自家末梢血幹細胞移植、再発を経験した。自身の経験をもとに、がん患者の支援活動に 20 年以上携わっている。グループ・ネクサス・ジャパンは悪性リンパ腫の患者や家族に適切な医療情報や交流の場を提供するとともに、患者・家族の医療環境向上のための調査研究や政策提言などを目的とする全国患者団体で、2001 年に設立された。天野氏は設立から間もないころ、グループ・ネクサスの活動に参加し、現在は理事長を務めている。同団体は 2006 年にNPO 法人化、さらに 2013 年には一般社団法人化された。
天野氏は 2009 年から厚生労働省のがん対策推進協議会の委員と会長代理を 2 期 4 年務め、国のがん対策推進基本計画の策定に関わった。2015 年には、がん患者に共通する課題解決のため、全国のがん患者団体と連携して一般社団法人全国がん患者団体連合会を設立し、現在、理事長を務めている。また、一般社団法人神奈川県がん患者団体連合会理事長、一般社団法人がんと働く応援団理事、厚生労働省厚生科学審議会がん登録部会委員、厚生科学審議会科学技術部会全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会委員、先進医療技術審査部会などの委員も務めている。患者支援を中心とした長年にわたる活動を称えるものである。
 
「朝日がん大賞」 過去の受賞者
 


日本対がん協会賞

 
2021(令和3)年度の受賞者・受賞団体(4個人、1団体)
 
◇ 個人の部 ◇
 
蔭山 典男(かげやま・のりお)70 歳 京都岡本記念病院 乳腺外科 主任部長
1977 年、京都府立医科大卒。同大付属病院などで診療に従事してきた。1998 年から京都府医師会乳がん検診委員会の委員、正副委員長を歴任し、現在は副委員長。同医師会が受託する京都府内の乳がん検診では、厚生労働省がマンモグラフィ併用検診を推奨する前から行政と折衝し、2001 年の加茂町を皮切りに、2006 年までに全市町村でマンモグラフィを導入し、受診者数、がん発見数ともに向上。全国に先駆けた試みとの評価を得た。また、検診医の読影能力や放射線技師の撮影技術を高めるための講習会を開き、精度向上にも努める。女性の生活の多様化に対応するため、個別検診を導入して受診機会を拡大し、2016 年から居住する市町村以外の指定医療機関でも受診できる京都府乳がん管外受診制度を確立するなど、受診者の利便性と受診率の向上を図るなど、京都府での乳がん検診事業の発展に大きく貢献したことが評価された。
 
猿木 信裕(さるき・のぶひろ) 65 歳 群馬県衛生環境研究所長
群馬大学医学部卒。所属する群馬県立がんセンターから 2000 年に研究協力者として、がん研究助成金事業の「地域がん専門診療施設のソフト面の整備拡充に関する研究」に参加したことから、がん登録事業に携わる。2007年には、全国がんセンター協議会の協力で「全がん協加盟施設の部位別施設別 5 年生存率」をまとめた。信頼性のある生存率が公表されたことにより、医師や患者は治療法の選択が可能になり、のちに全国のがん診療連携拠点病院の部位別施設別 5 年生存率の公表につながった。2016 年には全がん協加盟施設の「10 年生存率」も公表している。2015 年に群馬県がん登録審議会長、2016 年から群馬県がん対策推進協議会がん登録・情報分析推進検討部会長を務め、群馬県のがん登録の底上げを図った。その手腕が認められ、2017 年に特定非営利法人「日本がん登録協議会」理事長に就任。地域がん登録だけでなく、院内がん登録にまで門戸を広げて相互連携を図り、国内のがん登録事業の基盤を作った功績が評価された。
 
渋谷 大助(しぶや・だいすけ) 67 歳 一般社団法人 日本消化器がん検診学会 理事長
宮城県対がん協会がん検診センター所長、業務執行理事として約 20 年間活動してきた。2017年からは日本消化器がん検診学会理事長も務め、国内のがん検診の学術研究でも指導的役割を担っている。胃がん検診では、高濃度低粘性バリウムを用いた二重造影法の確立や、デジタルラジオグラフィー検診車の導入など、胃 X 線検診の画像診断精度の向上を図るとともに精度管理の維持・発展に努めた。ヘリコバクターピロリ感染胃炎の胃 X 線診断を全国に先駆けて宮城県対がん協会で導入し、胃がん検診を通じてのピロリ菌感染と胃がんの関係について適正な情報提供やリスク層別化、除菌治療に関する事後指導に役立てられるようにした。また、2011 年の東日本大震災では、被災者ががんで命を落とさないよう宮城県内の検診実施体制を迅速な立て直しに奔走。宮城県がん総合支援センター長として、がん患者の相談支援窓口を開設し、心理的サポートや就労支援、ピアサポーターの育成に努めてきたことも評価された。
 
戸堀 文雄(とぼり・ふみお) 68 歳 一般社団法人 秋田県総合保健事業団 理事長
1987年から秋田県総合保健事業団に勤務し、がん登録事業や胃がん・大腸がんの疫学調査などにもとづく実態解明、がん検診の受診勧奨・精度管理など幅広い分野に携わってきた。がん死亡率の高い秋田県では、その抑制が課題となっている。1999 年から秋田県地域がん登録委員、秋田県総合保健センター疾病登録室長として、がん登録を担い、毎年、県医師会へ解析データを報告するとともに、がん予防啓発のために市町村、住民へも情報を提供してきた。2014 年に 5年相対生存率をまとめ、秋田県は全国に比べて罹患率と死亡率は高いが、生存率はほぼ全国水
準であることをデータで示した。その上で、秋田県のがん死亡率を抑えるには、生活習慣を見直して罹患率を下げるとともに、がん検診受診で早期の発見・治療に努めることが重要だと訴えた。秋田県医師会のがん検診促進キャンペーンではテレビ CM に出演するなどの啓発活動も続けている。これら長年にわたる活動と実績が秋田県のがん対策に大きく貢献したと評価された。
*年齢は2021年9月1日現在
 
◇ 団体の部 ◇
 
ケムラン~屋内完全禁煙の飲食店を応援する会~ (管理人:伊藤ゆり 大阪医科薬科大学准教授)
受動喫煙はがんのリスクであり、働く場でもある飲食店での受動喫煙対策は重要な対がん活動であるとの考えのもと、東京五輪までに受動喫煙防止の環境を整えるために何かしようと、公衆衛生の研究者らが2015年、Facebookで活動を始めた。その後、「世界禁煙デー」である2017年5月31日、インターネットに公式サイト「Quemlin(ケムラン)~屋内完全禁煙の美味しい店を紹介するサイト~」(https://quemlin.com/)が開設された。このサイトでは、市民ボランティアが地元や旅行先で屋内完全禁煙、加熱式・電子たばこNGの飲食店を探して実際に飲食し、「屋内完全禁煙の美味しい飲食店」として登録している。現在、全国で約 200 人が活動し、登録店舗数は 850店にのぼる。がんを予防する環境づくりの中で、市民参加型の新しい活動として評価された。
 
日本対がん協会賞 過去の受賞者(個人)
日本対がん協会賞 過去の受賞者(団体)
 

選考委員会 (2021年度)

委員長  垣添 忠生 日本対がん協会会長
副委員長 武藤徹一郎 がん研有明病院  メディカル・ディレクター・名誉院長
     中川 俊男 日本医師会長
     大内 憲明 東北大学大学院医学系研究科客員教授・東北大学名誉教授
     津金昌一郎 医薬基盤・健康・栄養研究所 理事兼国立健康・栄養研究所長
     西山 公隆 朝日新聞東京本社 科学医療部長
     梅田 正行 日本対がん協会 理事長