朝日がん大賞・日本対がん協会賞

「朝日がん大賞」は日本対がん協会賞の特別賞として、朝日新聞社の協力で2001年に創設されました。対象分野は、日本対がん協会の活動の柱である「がん予防」全般とし、がん征圧に向けて優れた実績をあげて社会に貢献し、かつ、第一線で活躍している個人・団体を顕彰します。将来性のある研究の発掘、医療機器類の研究・開発、患者・治癒者の活動やケアなどの分野も対象としています。
 
「日本対がん協会賞」は対がん活動に顕著な功績のあった個人及び団体を顕彰して、がん征圧運動の一層の高揚を図ることを目的としています。
 


朝日がん大賞

 
2022(令和4)年度の受賞者
 

「疫学データに基づく日本のがん対策への貢献」

祖父江 友孝(そぶえ・ともたか)氏 63 歳 大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座 環境医学 教授
 
第3次対がん10カ年総合戦略事業の中で、がんの実態把握とがん情報の発信に関する研究を担当するとともに、2004~2013年に「がん罹患・死亡動向の実態把握に関する研究」班の主任研究者として地域がん登録を国として統括する体制を整えた。地域で異なる登録システムは標準化され、2016年から始まった全国がん登録の基盤づくりにつながった。がん検診の有効性評価の研究にも関わり、2003年からがん研究助成金「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究」班の主任研究者として、ガイドライン作成のための体制づくりに尽力した。ガイドライン作成の体制基盤は国立がん研究センターに引き継がれ、厚生労働省のがん検診方法の導入・変更の際に必須の科学的根拠の資料として活用されている。さらに、がん統計に関するポータルサイトを国立がん研究センターに開設し、研究者やメディアに広く活用されている。また、子宮頸がんの予防に有効とされるHPVワクチンの定期接種について、積極的勧奨が休止していた2015年に研究代表者として取り組んだ全国疫学調査は、2022年度からの積極的勧奨の再開に影響を与えた。がん統計情報やがん検診ガイドライン作成のための研究体制基盤整備などに尽力し、日本のがん対策を決めるための礎となる体制づくりの要として大きな役割を果たした。
 

 
「朝日がん大賞」 過去の受賞者
 


日本対がん協会賞

 
2022(令和4)年度の受賞者・受賞団体(3個人、1団体)
 
◇ 個人の部 (50音順)
 
神奈川県
渡會 伸治(とごう・しんじ)氏 66 歳 石川町内科クリニック院長
消化器外科医として横浜市立大学医学部病院、国立横浜病院などの第一線で5000例を超えるがん患者と向き合ってきた。その経験を生かし、地域医療に貢献している。2013年、横浜市の中華街に隣接する場所にクリニックを開業。近隣の病院や開業医と連携し、経済的に困窮している地元住民をはじめ、多くの患者を診察している。これまでに多くの早期がんを発見し、がん種や進行度合いによっては自院で内視鏡的治療を実施したり、病院治療に切り替えたりと、長年かけて培った理論や経験を市井に還元している。
 
三重県
中井 昌弘(なかい・まさひろ)氏 65 歳 三重県健康管理事業センター理事兼診療所長
健診業務と結核・生活習慣病の予防の普及啓発に長年にわたって尽力している。2005年から同センターで実施している健康診査、がん検診でのレントゲン、内視鏡、超音波検査、心電図検査などの診断に携わり、自治体や事業所の担当者を対象にした教育や相談に応じて、正しい知識の普及啓発に力を注ぎ、がん検診の精度管理の向上に貢献した。厚生労働省の「乳がん検診ガイドライン2013」の作成委員を務め、各種講習会の講師などとして全国レベルでの医療技術の普及にも努めている。
 
栃木県
菱沼 正一(ひしぬま・しょういち)氏 68 歳 栃木県立がんセンター名誉理事長
肝臓、胆のう、すい臓の外科手術に熟練し、多くの症例の手術を手がけ、栃木県内のがん治療の進展に貢献した。がん診療連携拠点病院の長として2019年度にPDCAサイクル部会を創設し、県内のがん医療の均てん化、質の向上に尽力。また、2019年に県がん・生殖医療ネットワークを設立し、県内のAYA世代等のがん患者の支援体制づくりに努め、妊孕性温存支援や治療費の助成事業推進に寄与した。2022年3月まで県がん対策推進協議会の会長として、県がん対策推進計画の推進など、栃木県のがん対策に大きく貢献した。
 
◇ 団体の部
 
東京都
特定非営利活動法人 Hope Tree(ホープ ツリー) 大沢かおり代表理事
がん治療の現場で見過ごされがちな、患者の子どもを支える活動を続けている。医療ソーシャルワーカー、臨床心理士、医師、チャイルド・ライフ・スペシャリスト、看護師らが2008年に結成。親のがんや死について、どう子どもに伝えるか、欧米の先進事例を学び、研修会や子どもが参加するプログラムを開催。参加した医療従事者らは、各現場でがんと診断された親と子どものサポートに取り組む。また、医療従事者の業務、患者の生活で日ごろ抱えている悩みや疑問に対応するため関連情報をウェブで公開している。
 

日本対がん協会賞 過去の受賞者(個人)
日本対がん協会賞 過去の受賞者(団体)
 

《2022年度 選考委員会》
 
委員長 垣添 忠生 (日本対がん協会会長)
副委員長 武藤 徹一郎 (がん研有明病院 名誉院長)

選考委員 (50音順)
梅田 正行 (日本対がん協会 理事長)
大内 憲明 (東北大学大学院医学系研究科客員教授・東北大学名誉教授)
高山 裕喜 (朝日新聞東京本社 くらし報道部長)
津金 昌一郎 (医薬基盤・健康・栄養研究所理事 兼 国立健康・栄養研究所長)
松本 吉郎 (日本医師会 会長)