2023年05月24日(水) 開催

働く世代のヘルスリテラシーと企業のがん対策

中川 恵一 氏

東京大学大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座 特任教授

中川 恵一 氏

1960年生まれ。東京大学医学部卒業後、同医学部放射線医学教室に入局。スイスのポール・シェラー研究所を経て2002年、東京大学医学部附属病院放射線科准教授。03年~14年、同病院緩和ケア診療部長を兼任。厚生労働省がん対策推進企業アクション議長、がん検診のあり方に関する検討会構成員。日本経済新聞で「がん社会を診る」を連載中。

1960年生まれ。東京大学医学部卒業後、同医学部放射線医学教室に入局。スイスのポール・シェラー研究所を経て2002年、東京大学医学部附属病院放射線科准教授。03年~14年、同病院緩和ケア診療部長を兼任。厚生労働省がん対策推進企業アクション議長、がん検診のあり方に関する検討会構成員。日本経済新聞で「がん社会を診る」を連載中。

セミナーレポート③「働く世代のヘルスリテラシーと企業のがん対策」

日本対がん協会は2023年5月24日、「働く世代のためのがんリテラシー向上プロジェト」の一環として、第3回がんリテセミナーをオンラインで開催した。「働く世代のヘルスリテラシーと企業のがん対策」をテーマに、東京大学大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座の中川恵一特任教授が講演。企業の担当者やメディア関係者ら約200人が聴講した。

中川氏は東大病院でがんの放射線治療に携わりながら、長年、学校でのがん教育に尽力してきた。また、厚生労働省のがん対策推進企業アクション議長、がん検診のあり方に関する検討会構成員などのほか、今回の協会プロジェクトのアドバイザーを務めている。

ヘルスリテラシーの低さが がん対策に悪影響

日本対がん協会は2023年5月24日、「働く世代のためのがんリテラシー向上プロジェト」の一環として、第3回がんリテセミナーをオンラインで開催した。「働く世代のヘルスリテラシーと企業のがん対策」をテーマに、東京大学大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座の中川恵一特任教授が講演。企業の担当者やメディア関係者ら約200人が聴講した。

中川氏は東大病院でがんの放射線治療に携わりながら、長年、学校でのがん教育に尽力してきた。また、厚生労働省のがん対策推進企業アクション議長、がん検診のあり方に関する検討会構成員などのほか、今回の協会プロジェクトのアドバイザーを務めている。

「働く世代のヘルスリテラシーと企業のがん対策」オンラインセミナーの様子

一方、がんの男女別・年代別の罹患数は、子宮頸がんや乳がんなどで50歳代までは女性が多い。女性の社会進出、継続雇用・定年延長などで働く世代のがん罹患は増加が予想される。
がん対策推進企業アクション(賛同約4500社・団体)による中小・小規模事業所でのがん対策の実態調査で「大いに関心がある」「関心がある」と回答した経営者は約7割を占めた。

第4期計画は、事業主や医療保険者に、雇用者や被保険者・被扶養者ががん検診やがんの治療と仕事の両立など、がんに関する正しい知識を得られるよう、努めることを求めている。

喫煙、感染、飲酒のリスク理解が有効

がんリスクは主に喫煙(受動喫煙)、ウイルス感染、飲酒で高まる。肝がん、胃がん、子宮頸がんは抗ウイルス薬、ピロリ菌除菌、HPVワクチン接種でリスクを低減できるが、日本人の罹患数は欧米より多い。中川氏はこれらを理解してもらうことも有効だと助言した。

がん検診は健康増進法で自治体が実施すると定められているが、職域での実施に法的根拠はない。第4期計画は感染対策の強化、受診率目標の50%から60%への引き上げに加え、職域を含めた組織型検診の構築を目指すことも掲げている。

質疑応答では、ヘルスリテラシーを身に付ける手段として、中川氏は、働く人や家族が基礎知識を学べる「がんリテラシーLINE」、テストと解説で構成し、企業(職場)単位で受講できる「がんリテラシー診断」など協会のプロジェクトを挙げ、「ぜひ、このプロジェクトを利用してほしい」と話した。

職域検診の法整備については「働く世代の6~7割は職域でのがん検診であり、法的裏付けは必要だが、最低5年、長ければ10年かかる。企業の自助努力も必要」。また、がん告知後の退職・解雇について「まだ、がんは『死の病』というイメージがあるようだが、早期がんは9割以上が助かる。ヘルスリテラシーの向上で誤った行動を防げるのでは」と話した。
(日本対がん協会機関紙「対がん協会報」2023年6月1日号から)