2023年07月20日(木) 開催

健康経営・人的資本経営の視点から考える企業のがん対策

講演1:

健康経営の推進について

山崎 牧子 氏

経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 課長補佐

山崎 牧子 氏

2003年、経済産業省 入省。会社法改正や投資事業有限責任組合法等の法執行業務、人事評価制度、メディアコンテンツやヘルスケア産業振興、万博推進業務等を経て2022年6月より現職。

2003年、経済産業省 入省。会社法改正や投資事業有限責任組合法等の法執行業務、人事評価制度、メディアコンテンツやヘルスケア産業振興、万博推進業務等を経て2022年6月より現職。

講演2:

「我が信条」に基づく経営 ― ヘルスケアの進化に向けて「人の力」を活かす

玉井 孝直 氏

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 代表取締役社長

玉井 孝直 氏

1993年日系機械メーカー入社。2000年ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 メディカル カンパニーに入社後、経営企画部やファイナンスに従事し、米国勤務も経験。その後、日本の経営企画部長、ファイナンス担当バイスプレジデント兼CFO、アジア太平洋地域のファイナンス担当バイスプレジデント兼CFO(シンガポール駐在)などを経て、帰国後外科領域のエチコン事業部バイスプレジデントに就任。その後アジア太平洋地域エチコン事業バイスプレジデントを務め、2018年9月より現職。

1993年日系機械メーカー入社。2000年ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 メディカル カンパニーに入社後、経営企画部やファイナンスに従事し、米国勤務も経験。その後、日本の経営企画部長、ファイナンス担当バイスプレジデント兼CFO、アジア太平洋地域のファイナンス担当バイスプレジデント兼CFO(シンガポール駐在)などを経て、帰国後外科領域のエチコン事業部バイスプレジデントに就任。その後アジア太平洋地域エチコン事業バイスプレジデントを務め、2018年9月より現職。

セミナーレポート④「健康経営・人的資本経営の視点から考える企業のがん対策」

日本対がん協会は7月20日、「健康経営・人的資本経営の視点から考える企業のがん対策」をテーマに、第4回がんリテセミナーをオンラインで開催した。企業のがん対策や働く世代のヘルスリテラシー向上をめざす「働く世代のためのがんリテラシー向上プロジェクト」の一環。経済産業省ヘルスケア産業課課長補佐の山崎牧子氏と、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 代表取締役社長の玉井孝直氏を講師に招き、企業・団体の担当者らが参加した。

健康経営は、がん対策を含む従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること。企業理念に基づき、従業員等へ健康投資をすることで従業員の活力や生産性が向上して組織が活性化し、結果的に業績向上や株価向上につながる。また、人的資本経営は、従業員が持つ能力を企業活動の「資本」ととらえ、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値の向上につなげる経営の考え方。従業員の疾病予防や健康増進のための支出はコストではなく投資であるとの考え方でもあり、2023年1月に改正された内閣府令で、上場企業は人的資本について有価証券報告書で開示することが義務付けられている。

意見交換をする(左から)玉井孝直氏、山崎牧子氏、石田一郎常務理事

山崎氏は「健康経営の推進について」と題して講演。日本では今後、2050年にかけて総人口は約20%減少し、生産年齢人口(15~64歳)は約30%減少するとの予測を紹介し、総人口の約40%が高齢者、約10%が要介護者となり、対処しなければ経済維持が困難になると指摘した。そのため、国は健康寿命を2040年に75歳以上、公的保険外のヘルスケア・介護に係る国内市場を2050年に77兆円 (2020年は24兆円)とする目標を設定している。

約1万7000社が「優良」認定・・・就活生が望む勤務条件トップにも

健康経営については、従業員が健康になることで業務パフォーマンスが向上し、組織の活性化につながる。また、企業イメージの向上により優秀な人材を獲得でき、離職率が低下するなど社会的効果が期待できる。職場で健康意識が高まることで、退職後も元気でいられ、結果的に国民の生活の質の向上、労働力人口の増加につながるとした。経済産業省は2014年度から健康経営をする企業を選定する調査を始め、2016年度に健康経営優良法人認定制度を設けた。優良な健康経営に取り組む法人を「見える化」し、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから社会的評価を得る。2022年度で約1万7000社にのぼる。

現在では健康経営の取り組みに注目する投資家が増えているほか、就活生とその親に対するアンケート調査(2016年)では、勤務先に望む勤務条件として従業員の働き方や健康への配慮が最多になるなど、社会的な変化も出てきたという。

「我が信条」に基づく経営・・・社員の可能性最大化へ「健康」重視

ジョンソン・エンド・ジョンソンの玉井氏は「『我が信条』に基づく経営 ― ヘルスケアの進化に向けて『人の力』を活かす」と題し、同社の取り組みの根底には、企業理念・倫理規定である「我が信条」(Our Credo)があることを説明した。「顧客」「社員」「地域社会」「株主」に対して果たすべき社会的責任を明記したものであり、企業が成長し続けるには、社員が持つ可能性を最大化することが大切だとした。

様々なライフステージ、価値観を持つ社員が心身ともに健康であってこそ、大きな力を発揮できるとの考えから、社員一人一人の多様性や価値観を尊重し、仕事を通じた目的意識と達成感の獲得、能力開発、スポーツ、ボランティアなどの機会を社員に提供している。また、健康保険組合は職域におけるがん検診に関するマニュアルを参考に、がん検診に関する情報提供、費用補助を実施。メンタルヘルス面では社外カウンセラーに24時間電話相談できる。社員が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境づくりをめざしているといい、玉井氏は「ヘルスケアカンパニーとして、患者の健康のために仕事をするには、私たち自身が健康でなければならない」と話した。
(日本対がん協会機関紙「対がん協会報」2023年8月1日号から)