東京都葛飾区立奥戸小学校

2017.12.09

講師:林和彦先生

人数:6年生 約60名

 東京都葛飾区の葛飾区立奥戸小学校で2017年12月9日、日本対がん協会の協力でがん教育の出張授業が行われた。同校の公開授業の一環で、講師は、東京女子医科大学がんセンター長の林和彦教授。  林教授は、がんの専門医として約30年がん患者や家族とかかわってきたなかで、がん教育の必要性を感じ、数年前からがん教育にも取り組んでいる。この日は約60人の6年生の児童を対象に2時限の計約90分の授業を展開、約40人の父母も参観した。
 授業ではまず、男性は3人に2人、女性は2人に1人が生涯にがんにかかるとされているデータを示し、がんが身近な病気であることを説明。林教授自身、中学3年の時に大好きだった父親を胃がんで亡くしたことを明かした。
 当時は父親ががんと言われても何だかわからず、大事な時間を一緒にすごせないまま亡くなってしまい、「知らないということはつらい、と思った」と林教授。「そのため、がんの医師になりたいと思い、今こうやって学校にも来ている」と、がん教育への想いを語った。
 がんは細胞のミスコピーで起こることや、だれもがなる可能性がある病気であることを説明したうえで、がんを防ぐための新12か条を紹介。その第一がたばこを吸わないことであることを示し、15歳までにたばこを吸ってしまうと、吸わない人より将来がんになる確率が30倍になることを解説。他人が吸うたばこの煙を吸うことでも肺がんの死亡率が約1.2倍になることも示し、「たばこを吸わないことを常識と思ってください」と強調した。
 また、「今はがん患者の60%以上が治り、早期発見、早期治療をすればほとんどが治ります」と語り、検診の大切さを紹介。「家に帰って、検診を受けることを家族に言ってくれれば、君たちが大切な人を守ることができる」と、やさしく呼びかけた。
 また、林教授は「これから先、家族の中にもがん患者になる人が出来るかもしれない。そんなときにどうしたらよいのか。今から考えていたほうがいい。怖いかもしれないけれど、知っておいたことで強くなれる」と語り、後半の2時限目ではがん患者の気持ちについての授業を展開。文部科学省が公開提供しているがん体験者が想いを語るビデオを児童と見た後に、「がん患者さんにはどんなつらい思いや苦しみがあると思いますか」「大切な人ががんになったらどうしますか」という事前に示していた問いかけについて、児童らを数人ずつのグループに分けて意見を出し合わせた。
 児童からは「家族に心配をかけてしまうのがつらい」「今までできた日常生活ができなくなる」など、患者の気持ちに思いを巡らせた答えが次々とあがった。林教授は「30年間がんの医療にかかわってきたが、がん患者さんを支える力は医者の力だけではありません。もっと大きな力は家族の力。これから君たちが家族を守る立場になります。家族や命のことを考えてください」と授業をしめくくった。