2026年02月26日(木) 開催

講演資料

働くがん患者のこころの持ち方を知る

講演1:

働くがん患者のこころの持ち方を知る

清水 研 氏

がん研有明病院腫瘍精神科部長、精神科医、医学博士

清水 研 氏

1971年生まれ。金沢大学卒業後、内科研修、一般精神科研修を経て、2003年より国立がんセンター東病院精神腫瘍科レジデント。以降一貫してがん医療に携わり、対話した患者・家族は5000人を超える。2020年より現職。日本総合病院精神医学会専門医・指導医。日本精神神経学会専門医・指導医。著書に「不安を味方に生きる」(NHK出版)、「がんで不安なあなたに読んでほしい」(ビジネス社)など。

1971年生まれ。金沢大学卒業後、内科研修、一般精神科研修を経て、2003年より国立がんセンター東病院精神腫瘍科レジデント。以降一貫してがん医療に携わり、対話した患者・家族は5000人を超える。2020年より現職。日本総合病院精神医学会専門医・指導医。日本精神神経学会専門医・指導医。著書に「不安を味方に生きる」(NHK出版)、「がんで不安なあなたに読んでほしい」(ビジネス社)など。

講演2:

就労支援の現場からみる“働く”の課題と支援 ~企業が果たす役割

近藤 明美 氏

特定社会保険労務士 近藤社会保険労務士事務所代表

近藤 明美 氏

明治大学卒業後、企業の人事・総務職に従事。2007年、社会保険労務士試験に合格、2008年9月近藤社会保険労務士事務所を開業。様々な企業の人事労務管理支援を手掛け、2009年よりがん患者の就労支援に携わる。現在、日本対がん協会、がん診療拠点病院等の医療機関、埼玉産業保健総合支援センターで治療と仕事の両立支援に関わる相談員を務める。NPO法人がんと暮らしを考える会副理事長、一般社団法人CSRプロジェクト副代表理事。委員就任実績:2025年「治療と仕事の両立支援指針に関する検討会」委員、2023年「治療と職業生活の両立支援に係る主治医意見書簡易様式作成事業検討委員会」委員、2022年「治療と仕事の両立支援のための新たなマニュアル作成委員会」委員他。共著書「がん治療と就労の両立支援制度設計・運用・対応の実務」(日本法令)他。

明治大学卒業後、企業の人事・総務職に従事。2007年、社会保険労務士試験に合格、2008年9月近藤社会保険労務士事務所を開業。様々な企業の人事労務管理支援を手掛け、2009年よりがん患者の就労支援に携わる。現在、日本対がん協会、がん診療拠点病院等の医療機関、埼玉産業保健総合支援センターで治療と仕事の両立支援に関わる相談員を務める。NPO法人がんと暮らしを考える会副理事長、一般社団法人CSRプロジェクト副代表理事。委員就任実績:2025年「治療と仕事の両立支援指針に関する検討会」委員、2023年「治療と職業生活の両立支援に係る主治医意見書簡易様式作成事業検討委員会」委員、2022年「治療と仕事の両立支援のための新たなマニュアル作成委員会」委員他。共著書「がん治療と就労の両立支援制度設計・運用・対応の実務」(日本法令)他。

セミナーレポート⑪「働くがん患者のこころの持ち方を知る」

働く世代のためのがんリテラシー向上プロジェクトの一環として、日本対がん協会は2月、第11回がんリテセミナー「働くがん患者のこころの持ち方を知る」をオンラインで開催し、企業の人事総務担当者や経営者らが参加した。精神科医でがん研有明病院腫瘍精神科部長の清水研氏と、特定社会保険労務士で近藤社会保険労務士事務所代表の近藤明美氏を講師に招き、がんと診断された従業員と向き合い、治療と仕事の両立支援を進めるうえで企業の役割、制度のあり方を考えた。

清水氏は「働くがん患者のこころの持ち方を知る」と題し、がん告知後の患者の心の変化、がんに対する患者本人のイメージや心理状態、がん患者とのコミュニケーションについて実際の事例をもとに支える側の対応を考えた。がん告知で患者は大きな衝撃を受ける。長期の追跡調査では、罹患1年以内の患者の自殺数は、罹患していない人の23.9倍にもなるが、1年以上経過すると1.1倍に下がる。つらく悲しい気持ちを乗り越えて心の健康が回復してくると、患者はがんになったことの意味を考えるようになり、生きていることへの感謝、人生の優先順位の変化、人の痛みや苦しみが分かるなど、新しい世界観を持つようになるという。清水氏は、心の健康の回復には告知後の悲しみなど負の感情も大事だと説明した。

一方、「がん患者はかわいそう」(厳しい状態)というネガティブなイメージから周囲に病名を知られたくない患者もいる。健康であることの優越感を無意識に感じ、「自分は病気にはならない」との思い込みがあると清水氏は推察。「I am cancer」「I have a cancer」という二つの表現を用い、「自分のすべてががんになった」と感じている人が「がんは自分の一部に過ぎない」と思えた時、周囲に伝えられるのかもしれないと語った。

患者とのコミュニケーションでは、共感(理解)しようとする姿勢が大切であり、そのうえで会社や同僚としてできるサポートを考える。患者へ声をかける際、「無理に頑張りすぎていないか」「手伝えることはあるか」「お互い様(誰もがいつがんになるか分からない)」などの視点に立つようアドバイスした。

近藤氏は「就労支援の現場からみる“働く”の課題と支援 ~企業が果たす役割」をテーマに、26年4月施行の「治療と就業の両立支援指針」を中心に解説した。指針は、すべての企業、労働者を対象に、治療と仕事の両立支援のために必要な体制の整備、措置を講じることを事業主に努力義務として課す。両立支援を促すための法的根拠となるよう、国が従来のガイドラインから格上げした。その中で、事業主は労働者(患者)が両立支援を申し出た場合、一方的に判断せず、本人の意向を聴いて対応を話し合い、了解を得るよう努める。できる限り就業機会を失わないよう留意し、病気や治療への誤解や偏見が生じないよう配慮すると定めている。企業の対応として、➀相談窓口の明確化と周知、②本人との面談による意向把握、③医療機関との連携、④両立支援プランの策定、⑤定期面談とプランの適宜見直しを挙げ、「働けるか、否か」の二択ではなく、「どうすれば働けるか」という視点で段階的に支援を行うことが重要だと説明した。療養からの職場復帰では個別の配慮と組織運営の両立が課題になる。復職を望む本人の心身状況から現実的な勤務形態、職場の実情を勘案して調整するが、本人の希望、活用できる制度や勤務方法を確認し、産業医や人事と情報共有を図りながら進める。

近藤氏は一例として休職期間延長、試し出勤制度など休職・復職制度の柔軟な運用例を紹介し、復帰の可否を考えるのではなく、どのように戻るかを一緒に考える仕組みづくりが重要だと述べ、また、全国のがん診療連携渠底病院のがん相談支援センター、都道府県ごとの産業保健総合支援センターといった社外の相談窓口の利用も紹介した。最後に、近藤氏は情報共有と対話の重要さを改めて強調し、キャリアと人生を全うできる職場につながるヒントにしてほしい、と述べた。 講演後は、参加者からの質問に両氏が回答した。

参加者からの質問に答える講師。左から、近藤明美氏、清水研氏
参加者からの質問に答える講師。左から、近藤明美氏、清水研氏

日本対がん協会機関紙「対がん協会報」2026年3月1日号から