東京都豊島区立千川中学校

2016.01.16

講師:佐瀬一洋先生

人数:1,2年生 71名

 日本対がん協会は1月16日、東京・豊島区の豊島区立千川中学校でがん教育の出張授業を行った。豊島区では地域の人たちも授業を見学できる「としま土曜公開授業」を実施している。同校でもこの公開授業の中で年に2回「課題別学習教室」を行っている。現代社会が抱えるさまざまな課題を理解するきっかけ作りになるような、複数のテーマの出前授業を用意し、生徒それぞれが好きな授業を2つ選んで聴講できる仕組みだ。
 今年度の後期に用意された授業は「租税」「国際協力」「法教育」「金融教育」「がん教育」「感染症予防」の6つ。それぞれ東京税理士会、JICA、東京弁護士会などが協力して開講した。同校の岡泉美和子副校長は「各分野で活躍している方たちの話を聴くことで、世の中には色々な職業、役割があるのだということを知るきっかけになれば。キャリア教育の一環とも位置付けています」と話す。
 この日の授業の対象は1年生と2年生。日本対がん協会が協力した「がん教育」には2回の授業で合わせて71名の生徒が参加した。講師は順天堂大学大学院教授で、がん経験者でもある佐瀬一洋先生。昨年も千川中学で出張授業を行っているので、教室には昨年に続いて佐瀬先生の授業を選んだ生徒も何人かいた。
 この日のタイトルは「お医者さんが患者さんになって感じたこと、考えたこと」。中学校側からのリクエストもあり、がんと診断されてからの自身の体験を中心に話した。当時、患部である脚を切断しても余命2年と言われていた骨軟部肉腫と診断された時の衝撃、絶望の中ハーバードの論文で見つけた最新の治療法に希望を見出し、2年間にわたる苦しい抗がん剤治療と手術に耐えて生還したこと。普通の生活を送ることの素晴らしさを語る佐瀬先生の話に生徒たちも熱心に聞き入っていた。
 がんと診断されてからの心の変化を詳しく説明し、自らの経験から「頑張って医学や科学を進歩させてくれた人たちのおかげでこうして元気になれた。みんなは今やっている勉強が何の役に立つのかと思っているかも知れないけれど、将来きっと役に立つ。正しい知識を持つことはとても大切。知識があれば、いざ危ない時にも大丈夫なんだよ」と優しく語りかけた。
 2回目の授業ではがんの基礎知識を教える時間を増やした。生徒たちの反応を見ながら質問を増やして生徒たちの積極的な発言を引き出したり、要所要所で対がん協会が作成した映像教材『がんちゃんの冒険』や『がんって、なに?』の動画を挿入して、生徒たちの興味や集中力を高める工夫を凝らした。生徒たちもリラックスして活発に発言していた。
 参加した生徒たちは「がん教育」を選んだ理由を「病気になった人がいるから、詳しいことを知りたかった」「がんになった人の話が聞きたかった」などと話した。