大淀高校看護・医療コース(奈良県大淀町)

2013.09.06

講師:向原徹先生

人数:1年生 37名

調べあい 一緒に考える

 奈良県立大淀高校(奈良県大淀町)の1年4組は、県内の普通科高校で唯一の「看護・医療コース」。生徒たちは、がん専門医師から受けた特別授業をきっかけに、夏休みにも登校して「がん」について自分たちで調べ、成果を文化祭で発表しました。医師や看護師などそれぞれの夢に向け、生徒たちの努力が続きます。受けた授業は、日本対がん協会と朝日新聞社が主催する「ドクタービジット」。学校現場に医師や専門家を派遣して授業を行っています。

医療系への思い、より深く

 「ここで先輩方にお聞きします。現在、日本では何人に一人が一生のうちにがんになるでしょうか?」
 まだ残暑厳しい昨年の9月6日。奈良県大淀町役場に隣接する「あらかしホール」で、高校生3人が壇上から聴衆に向かって問いかけた。
 大淀高校1年4組の生徒たち。夏休みにも何度も学校に集まり、クラス全員で直前まで練り上げた研究成果を、同校の文化祭「友楽祭」で発表した。発表内容は「がん」をテーマにしたものだ。
 「細胞が寿命を迎え、新しく生まれ変わったときにミスがあると、それががん細胞になるのです」
 「がんは本人にきちんと伝えるのが今では一般的です。医師は『一緒に闘いましょう』という気持ちを込めて告知するそうです」
 「早期発見すれば多くは治ると言われています。検診は、本当に大切です」
 映し出されるスライドと共に、流れるように繰り出された解説。その様子に、会場の保護者や教師からも感心の声が上がった。
 最後は1年4組全員がステージに上がり、大きな拍手を浴びた。発表は、審査員特別賞に輝いた。
 この発表のきっかけになったのがドクタービジット。3カ月前に1年4組を訪問した向原徹・神戸大特命准教授(腫瘍内科学)の特別授業だった。向原さんはがんの仕組みや日本の現状、最新の治療法などをやさしく解説。「みなさんの力で、がんになる人を一人でも減らしてほしい」と訴えた。
 生徒たちはその後、家族や親戚に聞き取りしたり、インターネットを駆使したり。それぞれの方法でがんのことを調べた。「医療については知らないことも多く、私自身も生徒と共に学びました」(担任の杉浦美千代教諭)
 文化祭に向け、発表資料の最終チェックが8月末にあった。その資料を見た向原さんは「とてもよく勉強されていて、素晴らしい。みなさんの中で、がんの医療に携わる方が生まれたらうれしく思います」とコメントを寄せた。
 同時に、日本対がん協会の阿南里恵さんが、自らの子宮頸がんの闘病体験を講演。それも発表に盛り込まれた。
 文化祭で、がん細胞が増える過程の調査を担当した千葉恋音さん(16)は「がんについて、とても細かいことまで知ることが出来て勉強になりました」。祖母や母親のがん体験について聞き取り調査をした松山ひかるさん(16)は「治療のことなどがよくわかるようになり、看護師になりたい気持ちがさらに強くなりました」と話していた。