神奈川県中原中学校

2014.09.18

講師:奥仲哲弥先生

人数:1年生 約130名

 文部科学省のがんの教育総合支援事業におけるモデル事業実施指定都市のひとつに、川崎市が選ばれた。その実践校である川崎市立中原中学校で9月18日、日本対がん協会が協力して1年生、約130名を対象に出張授業が実施された。
 講師はテレビでもおなじみの山王病院副院長で呼吸器センター長の奥仲哲弥先生。クイズを出したり生徒たちの中に分け入ってマイクを向けたりと、生徒の関心を引き付ける工夫を随所に取り入れながら軽快に話を進める。奥仲先生が抗がん剤のイメージを質問すると、生徒たちは「苦しい」「髪が抜ける」「吐き気」などと答えた。奥仲先生はテレビドラマなどでそのように描かれることが多いが、今は身体への負担が少ない抗がん剤もあると説明し、「私の患者の中には、抗がん剤を受けた後に中華を食べて帰った人もいるよ」と話した。さらに自身が執刀した胸腔鏡手術の映像を映し、医療技術が進歩し出血量も以前よりはるかに少量になったと話すと、生徒たちは驚いた様子だった。授業後の感想文でも、この映像に強い印象を受けた生徒が予想以上に多かった。将来、医療関係の仕事に就きたいという女子生徒は「家族にがんになった人がいる。お見舞いに行くといつも看護師さんたちがやさしくしてくれる。だから私も看護師になりたい」と話した。奥仲先生は「世の中の発明は、誰かが不思議に思ったことから生まれている。みんなも何かに興味を持って、今の勉強に取り組んでほしい」と激励した。
 講演のあと学年の教員の1人が、過去に大きな病気をしたとき、当時の生徒や保護者、家族が心の支えになったと話した。今回のような授業は他人事と感じたり怖いと思うかもしれないが、自分はもちろん周りの人がもし罹患したときに支えられるよう、貴重な機会として学んでほしいと締めくくった。
 生徒たちからは「医療技術が発達し、より患者のことを考えてくれているんだとわかった」「がんを怖がらなくてもいいと思えた。家族にも話したい」などと感想が寄せられた。
 今回の授業計画を担当した養護教諭の三好由紀子先生は、がん教育において教える側がどのように役割分担するかが今後の課題だと話した。同校は11月に、2年生を対象にした学級担任によるがん教育も計画している。