コロナ禍拡大でがん診察制限はありえるのか
がん患者はどうすれば?
~がん研有明病院病院長 佐野先生に聞く~

(インタビュー日時:2021年1月25日)

佐野武先生

【質問1】

 2回目の緊急事態宣言が出ました。1回目に比べて、患者数・重症者数・死亡者数とも、桁違いに多く、がん専門病院でも新型コロナ患者を受け入れたり、がん診察の制限をしたりする所が出てきました。今後、新型コロナ対応で、がんの診察の受け入れ制限拡大などの事態は、ありうるのでしょうか。

【佐野先生のお答え】

 (診察制限は)ありうるかと言えば、ありえます。ただそれは、プライオリティーの問題です。例えば、私たちの病院(がん研有明病院)では今、コロナ患者の入院を受け入れ始めましたが、1つの病棟に限ってのことで、がん診療は絶対に縮小しません。これは最後まで譲りません。院内で感染が起こって、病棟を閉じなければいけないようなことがあれば別ですが、そうでなければがん診療は縮小しないというのが大原則です。ですが一方で、例えば、東京都立病院の場合、都民に対する役割として必然的に、何を一番に持ってこなくてはならないか、というのがあります。
 新型コロナだけを見れば、そうかもしれませんが、他の病気の人がじっとしてくれているわけではないんです。がんの手術もそうですし、心臓の緊急手術もある。高度な機能をもった病院でしかできない患者さんのために、いつも病院は動いているわけです。コロナは確かに目立ちますが、そのために、「ほかの重要な命に関わる治療を縮小していいか」となると、これはプライオリティー、判断ですね。私たちはがん治療をコロナに譲る気はないので、これはある意味、わがままかもしれませんが、そこは機能の分担と言うことで、お互いカバーしなければならないと思っています。
 もちろん、がん治療と言っても、少々1カ月、2カ月手術がずれても、まずは関係ないだろう、がんの進展にそれほど大きく変わらないだろう、と思われるような状態もあります。どういうがんなら治療を少し遅らせてもいいか、どういうがんなら治療を遅らせてはダメなのか、そういう判断は私たちも臓器ごとに話し合っています。トリアージは必要ですが、がん診療全体を縮めてよいとは思っていません。そういう風になるべきではないと思います。

【質問2】

 1回目の緊急事態宣言では、がん患者さんの「受診控え」が起きました。1回目の宣言時以上に感染が猛威を振るっていますが、がん患者はどうように対応すべきでしょう。

【佐野先生のお答え】

 確かに第1波、第2波、最初の緊急事態宣言の時に比べると、明らかにコロナの患者数は増えています。ただ病院としての対応も進化しています。第1波の時は、患者さんも大変怖がったし、私たちも何が起きるか分からないという怖さがあり、非常に慎重になりました。たくさんの外来診療が止まって、どこまで恐れていいのか分からない、という所がありました。
 しかしこの病気に関しては、1年かけて、いろいろなことが分かってきました。病院は今では十分に対策を取っています。患者さんからの受診キャンセルは、もちろんありますが、第1波の時に比べると少ないです。ですから淡々と粛々と、がん治療を続けています。
 コロナは怖いようでいて、例えば、はしかや結核のように、外を歩いただけで、あるいは同じ部屋にいただけで、空気感染で移るかもしれない、というものではありません。きちんと距離を取って、お互いにマスクをしておけば、恐れるべきものではない。どの病院もきちんと対応しています。がん患者さんはがんの治療を最優先にして、病院に来て頂くべきだと思います。
 ただ、がん患者さんが偶然、普通の社会生活の中でコロナにかかるということはあります。その疑いがあった時、「普通の風邪かもしれないけど、コロナかもしれない」と心配になります。「がんの専門病院に通院している最中だが、どうすればいいか」。この場合でも、病院としては十分な対応を準備しています。すぐに問い合わせてください。その際は、すぐに病院に行くのではなく、どうすべきかというのを問い合わせるのがいいと思います。

以上