がん患者さんの新型コロナに関する質問と専門医の回答
~抗がん剤治療中の方、肺切除の方の不安と回答~
新型コロナウイルスについて、日本対がん協会がサバイバーネットを通じて、がん患者・家族の方の心配事を尋ねたところ、多くの不安や質問が寄せられました。例えば、「抗がん剤副作用で白血球が減っているが大丈夫か」「肺切除しているが大丈夫か」「感染かと思った時、だれに相談すれば」。
その中から代表的な質問を選んで、肺がん治療や抗がん剤治療に詳しい聖路加国際病院呼吸器内科部長の田村友秀先生に伺いました。なお、新型コロナウイルス感染防止のため病院に訪問せず、田村先生には文書で質問をして、文書で回答を頂く方式を取りました。
抗がん剤副作用で白血球減少の方や、肺切除の方の感染・重症化リスクに答えます。
その中から代表的な質問を選んで、肺がん治療や抗がん剤治療に詳しい聖路加国際病院呼吸器内科部長の田村友秀先生に伺いました。なお、新型コロナウイルス感染防止のため病院に訪問せず、田村先生には文書で質問をして、文書で回答を頂く方式を取りました。
抗がん剤副作用で白血球減少の方や、肺切除の方の感染・重症化リスクに答えます。
■下記の質問項目をクリックしてください、回答を確認いただけます。
【抗がん剤副作用に関する質問】
白血球減少の副作用がある抗がん剤を服用している場合、新型コロナウイルスの感染リスク・重症化リスクについてご教示ください。
例えば、「プレドニン」(一般名プレドニゾロン)
(類似の質問)
◆分子標的薬の副作用で間質性肺炎になっていますが、この場合のリスクは。
例えば、「プレドニン」(一般名プレドニゾロン)
(類似の質問)
◆分子標的薬の副作用で間質性肺炎になっていますが、この場合のリスクは。
≪田村先生からの回答≫
がん患者さんは、新型コロナウイルス感染が重症化するリスクが高いのではないかと考えられています。日本とは状況が異なるかもしれませんが、中国の武漢からはがん患者さんで感染リスクおよび重篤化リスクが高いことを示唆する報告がなされています。しかし、どのようながん腫や治療内容でよりリスクが高まるかなどの詳細なデータはありません。
化学療法やプレドニゾロンにより免疫が低下した状態、薬剤性間質性肺炎による呼吸機能予備力の低下時には、より注意が必要です。
一般の人以上に、ウィルス暴露の機会を減らすため、できるだけ家に居て多くの人と接することを避ける、頻回で適切な石鹸での手洗い、やたらと目鼻口に触れない、などを実践することはとても重要です。
化学療法やプレドニゾロンにより免疫が低下した状態、薬剤性間質性肺炎による呼吸機能予備力の低下時には、より注意が必要です。
一般の人以上に、ウィルス暴露の機会を減らすため、できるだけ家に居て多くの人と接することを避ける、頻回で適切な石鹸での手洗い、やたらと目鼻口に触れない、などを実践することはとても重要です。
発熱する副作用がある分子標的薬を服用しています。発熱した時、分子標的薬の副作用か、新型コロナによる発熱か、判断に迷います。主治医に相談した方がよいか、感染症の医師にみてもらった方がよいか、どうなのでしょう
≪田村先生からの回答≫
まず、あなたの体の状態や治療のことを熟知している担当医師に連絡するのが一番でしょう。一部の分子標的薬による発熱と新型コロナウイルスによる発熱では、発熱の時期や性状、随伴する症状(鼻水、咽頭痛、咳など)で鑑別できることも多いと思われます。前もって、発熱の状況に応じた対処方法を担当医と相談しておくことも、とても大切です。
【肺がん治療中、または肺切除に関する質問】
肺がん治療中です。新型コロナの感染リスク・重症化リスクは高いですか?
(類似の質問)
◆肺がんで左肺上葉を切除しました。感染リスクは高いでしょうか。(肺の一部切除の方からも同様の質問)
(類似の質問)
◆肺がんで左肺上葉を切除しました。感染リスクは高いでしょうか。(肺の一部切除の方からも同様の質問)
≪田村先生からの回答≫
がん患者さんの感染や重症化のリスクについては上に述べたとおりです。がんの既往のある人も重症化のリスクが高い可能性があるとの報告もありますが、詳細は不明です。肺切除で呼吸機能が低下している人、とくに喫煙などで慢性の肺疾患を合併している人はより注意を必要です。
しかし、怖がりすぎてもいけません。周囲の人と共に、ウィルス感染の機会を減らす、頻回の手洗いを行うなど、予防策を徹底しましょう。
しかし、怖がりすぎてもいけません。周囲の人と共に、ウィルス感染の機会を減らす、頻回の手洗いを行うなど、予防策を徹底しましょう。
【リンパ切除に関する質問】
がん治療でリンパ節を100カ所切除しています。感染リスク・重症リスクについて教えてください。(ほかにリンパ廓清している人からも同様の質問)
≪田村先生からの回答≫
がん患者さんのリスクについてはすでに述べたとおりです。特にリンパ節郭清自体が感染リスク・重症化リスクを増大させることは示されていません。
【脾臓切除に関する質問】
がんで脾臓を摘出しました。感染リスク・重症化リスクは高いですか?
≪田村先生からの回答≫
脾臓の摘出は免疫低下と関連する可能性があり、明らかにリスクを増大させたとのデータはありませんが、注意が必要です。
【感染か、と思った場合の対応】
がん治療中です。感染したかもしれないと思った時は、まず主治医に相談した方がいいですか。それとも地元の医者にみてもらった方がいいですか
≪田村先生からの回答≫
まず、あなたの体の状態や治療のことを熟知している担当医師に連絡するのが一番でしょう。電話などで症状や経過を詳細に伝え、指示を受けてください。どのような症状の場合にどう対処するか、前もって担当医師と相談しておくことも大切です。
【がん患者の感染予防について】
がん患者はリスクが高いので、帰宅した時、通常の手洗いのほか、シャワーや着ていた衣服の洗濯もした方がよいですか?
≪田村先生からの回答≫
手洗いは帰宅時だけでなく、頻回に適切に行ってください。通勤や買い物からの帰宅時に着替えるのはよいことと思います。清潔に保つことは大切です。しかし、スーツやジャケットを毎回クリーニングに出す訳にもいかないでしょう。必要により衣類用の消毒製品を利用することでよいと思います。あまり神経質になりすぎてもいけません。
「がん患者さんのための新型コロナウイルス対策」シリーズでは、がん患者さんは何に注意し、どう行動したらよいのか、がんや感染症などの専門医の方々に解説いただいています。詳しくはこちらからご覧ください。
今後もがん患者さんの不安を少しでも和らげるため、専門医の方々にお尋ねしてまいります。
羽山ブライアン・がん研有明病院 院内感染対策部副部長、尾﨑治夫・東京都医師会長、中川恵一・東大附属病院准教授らのメッセージを動画で掲載しています。