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がんの代替療法、有効性と安全性のまとめ
2003.01
坪野レポートから
がんの代替療法の有効性と安全性についての研究の現状を、ハーバード大学のグループがまとめて、内科学アナルズ2002年12月3日号に報告した。
米国内科医会が発行する同誌では、さまざまな病気に対する代替療法についての研究のまとめを連載中だ。今回の報告は、がんの代替療法を取り上げている。 代替療法の利用を考えている患者に対して、医師がアドバイスする際の科学的根拠を整理するというスタンスで、これまでの研究がまとめられている。

取り上げられているのは、食事療法、ビタミンやハーブなどのサプリメント、針灸、マッサージ、運動療法、心理療法などだ。
「有効性」については、「がんの進行や生存に対する効果」と、「症状緩和の効果」とう、二種類に分けて検討している。いっぽう「安全性」については、直 接的な有害作用と、(手術・放射線治療・化学療法などの)通常治療に対する干渉作用という、二つの観点から検討している。

4段階の判定
 こうした有効性と安全性のバランスを考慮しながら、それぞれの治療法について、次のような4段階の総合判定をしている。

1 「推奨」(Recommend)
2 「受容、場合によって推奨」(Accept: may consider recommending)
3 「受容」(Accept)
4 「反対」(Discourage)
1の「推奨」と、2の「受容、場合によって推奨」は、いずれも、「有効性と安全性の両方を支持する根拠がある」という意味だ。ただし、1の「推奨」のほ うが、その程度が強い。具体的には、3つ以上の無作為割付臨床試験があり、そのうちの75%以上で効果が認められるような場合に、この判定がされる。

2の「受容、場合によって推奨」は、これより弱い判定で、1つ以上の無作為割付臨床試験があり、そのうちの50%を超える研究で効果が認められるような場合があてはまる。

3の「受容」は、「有効性についてのきちんとした根拠はないが、安全性については支持されている」という判定だ。4の「反対」は、「効果がないか、重大な危険性があるかの、いずれかが示されている」という判定だ。
「推奨」はなし
 その結果、今回取り上げた代替療法について、
4段階の総合判定に加えて、有効性についての科学的根拠のまとめ(根拠の質や方向性)、リスクの程度、治療法を使うべきではない「禁忌」についても、くわしく特定しているのが特徴的だ。

ちなみに、食事療法とハーブ製品等については、種類が多すぎて全てをまとめきれないので、例として脂肪制限、マクロバイオティック、サメ軟骨などを取り上げたという。

「がんそのものの進行や生存に対する効果を意図した治療法」のなかで、最上位の「推奨」の判定がされているものはない。2番目の「受容、場 合により推奨の判定がされているのは、潜在性前立腺がんに対するビタミンEサプリメントのみだ。ただしこれも、効果の可能性を示した臨床試験は、1件しか 報告されていない。
抗酸化物質サプリメントは「反対」
 残りは、3番目の「受容」か、4番目の「反対」と判定されている。なかでも、ビタミンAとCという抗酸化物質のサプリメントが、「反対」とされている。 放射線治療や化学療法などの通常治療の一部は、フリーラジカルを発生させてがん細胞を傷害することで治療効果を発揮する。ところが、抗酸化物質をサプリメ ントとして大量に摂ると、こうした通常治療の効果をかえって弱めてしまう可能性があるため、「反対」という評価になっている。
また、乳がんに対する大豆製品も、「反対」とされている。大豆製品に多く含まれる植物性エストロゲンは、女性ホルモンのエストロゲン(乳がんリスクを高 めると考えられている)と化学構造が似ている。そのため、エストロゲンの働きを妨害して乳がん予防につながるという仮説が考えられている一方で、エストロ ゲンと同じ働きをすることでかえって乳がんのリスクを高めてしまう可能性もある。こうした有害作用についての理論的な可能性を、現時点では否定できないの で、「反対」という判定になっている。

いっぽう、「症状の緩和を意図した治療法」についても、最上位の「推奨」の判定がされているものはない。2番目の「受容、場合により推奨」か、3番目の「受容」のいずれかの判定がされている。
最もシステマティックな報告
 この報告は、がんの代替療法の有効性と安全性に関する研究のまとめとしては、筆者の知る限り、これまでで最もシステマティックで詳細なものだ。  とくに、有効性に関する評価だけではなく、安全性、リスクの程度、使ってはいけない「禁忌」の状況についても、具体的に特定している点が重要だ。引用している文献の数も、276件におよぶ。著作権の問題もあるかも知れないが、全訳に値する報告と言えるだろう。
総合判定の3番目にあたる「受容」については、正確な理解が必要だ。この判定に分類された治療法は、有効性が科学的に確認されているわけではない。けれ ども、生命に関わるような大きな有害作用が現時点で報告されておらず、そのようなことが生ずる理論的可能性も低いということに過ぎない。

だからこの判定は、医師が「効果の可能性があるので、承認する」という「積極的」な意味ではけっしてない。むしろ、「効果は未確認だが、重大な害の可能 性は低いので、患者が希望する場合には、反対しないでその意志を尊重する」という「消極的」な意味であることに注意すべきだろう。

出典 Weiger WA, et al. Advising patients who seek complementary and
alternative medical therapies for cancer. Annals of Internal Medicine
2002;137:889-903.
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