「人はなぜ、がんで亡くなるのか。学生への講義でこう話しています。それは、全身病化するからだと。全身のいろんな臓器、組織に転移していく。そういう前提でがんを考えなければいけない。それなのに、がん治療は、かつては、早期発見・早期切除で終わっていました。行政を含めて全身病だという考え方が浸透しませんでした。一つには(効く)薬がなかったので仕方ない面もあるのですが」
「乳がんでは1980年代に今の化学療法の基礎ができ、90年代にも抗がん剤の開発が相次ぎました」
「治療法が非常に進んだがんとそうではないがんがあります。がん死の1位を占める肺がんは、治療法の改善が望まれるがんの一つですが、なかなかやっかいです。肺がんの80%は非小細胞肺がんというタイプで、20%は小細胞肺がんというタイプです。小細胞肺がんには抗がん剤が比較的効きやすい。局所にとどまっている場合には、放射線と抗がん剤を同時に使って一部の方は治せます。ただ残念ながら、見つかった時にすでに転移している患者さんが多い。早期発見は今も重要な課題です」
「非小細胞肺がんに対しては、分子標的治療薬という、がんの増殖などにかかわる特定の物質を狙ってやっつけようという新しい薬も登場しましたが、この20年、大幅な治療成績の向上は見られていません。昔、国立がんセンターの肺がんグループにいたころ、大腸がんの治療は非常に大変だと思いました。当時、進行した肺がんの生存期間(中央値)が8カ月ほど、大腸がんは6カ月か、もっと短かったんです。その大腸がんが20年たった今になって25カ月ほどに延びたのに対し、肺がんは12カ月ぐらい。大腸がんの抗がん剤の開発が進み、5年でがらっと様相が変わりました」
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