対がん協会について

対がん協会とは何か、どういった活動をしているのか、
情報をまとめ、お知らせします。

がん征圧運動(各論)

がん征圧運動(各論)

【1】予防と普及・広報活動
〔一次予防・二次予防の重要性と普及・広報活動の役割〕
 がん予防や検診を勧める普及・広報活動は、がんの実態があまり知られていなかったころから、日本対がん協会の活動の中でも大きなウェイトを占め、評価されてきた。

先に展望したように、21世紀初頭に、がんに罹ってからでも確実に治る抗がん剤が開発され、あるいは進行したがんに対して完全な治療法が確立されることは、残念ながら期待しにくい。しかし、早期発見・早期治療によって、がんの大半が「死の病」ではなくなり、その傾向は21世紀にさらに強まるだろう。がんと立ち向かって生きるためには、一次予防(生活習慣の改善)、二次予防(早期発見・早期治療のための検診)が効果があることを広く知ってもらい、一般の理解を深めてもらわなければならない。

このような状況のもと、一次予防、二次予防は、21世紀前半においても重要な意味を持ち続ける。20世紀後半にわが国のがん死者が急速に増え、21世紀冒頭の2001年(平成13年)に30万人を超えることが確実な現在、予防の意味は、より一層大きくなっている。

一次予防、二次予防は、国民の医療費全体を減らすというマクロ経済的な効果も大きい。わが国の医療費総額は年々増えつづけている。1999年(平成11年)度の医療保険医療費総額は、前年度より1兆円以上増え、28兆5000億円に達した。生活保護などの公的負担分を含めると、総額が30兆円(国民一人あたり約24万円)を超えると推計される。一方で、集団検診による早期発見者群の医療費は、外来等で発見される患者群の治療費より少ないという調査結果(注2)があるように、早期発見・早期治療のための検診は総医療費抑制にもつながる。われわれは、予防の役割が国民経済的な面からも大きな意味を持っていることを認識し、予防の重要性とその普及・広報活動に、より力を入れることが大切である。

〈注2〉 久道茂東北大教授の研究(1981年)

〔一次予防と禁煙の効果〕
 一次予防を呼びかけるスローガンには、国立がんセンターによる「がんを防ぐための12ヵ条」(注3)がある。また、米がん研究財団の「国際がん予防15ヵ条」(注4)は、より具体的な数値にまで言及している。

「がんを防ぐための12ヵ条」は今後も、指針としての役割を持ち続ける。

それとともに、21世紀初頭のがん一次予防の重点目標として、禁煙運動を強めていくことが必要である。たばこの健康に対する害は、内外のいくつもの研究で明らかにされている。しかし、たばこ税は国税、都道府県税、市町村税として2兆円以上の財源になっていることや、たばこ耕作生産者の保護などから、わが国では「禁煙」が国の政策として本格的に採り入れられていない。「健康日本21」立案の過程で原案にあった喫煙率半減の数値目標が、最終的に表記されなかったことは記憶に新しい。

喫煙は、肺がん、喉頭がん、食道がんをはじめ多くのがんや心筋梗塞、脳卒中の罹患確率を高める(注5)。とくに近年、男性の喫煙率が減っているのに対し、女性の喫煙、とくに若い層に喫煙が増えているのは憂慮すべき風潮である(注6)。たばこが、ストレス解消などにある種の効果がある嗜好品であるとの見解はあるが、発がんとの関係でみれば、リスクを増大させる大きな要因であることは確実である。

いまや学問的には「喫煙の害」「禁煙の効果」が証明されているといってよい。
「健康日本21」にも「喫煙率の減少」という目標は掲げられたが、われわれはこれがより実効を持つ目標になるように努力すべきである。そのため、がん一次予防の具体的目標として、「禁煙の勧め」を強く打ち出したい。

アメリカでは、たばこの健康被害に対して損害賠償請求の民事訴訟が出され、日本とは裁判制度が違うが、和解金支払いや膨大な賠償認定の例がある(注7)。
広報活動において、こうした事実を普及させたい。と同時に、効果を生む禁煙対策にも取り組まねばならない。識者からは、たばこ販売価格の引き上げ、自動販売機の撤去、宣伝活動の規制などが提唱されている。たばこ税収入の減少を和らげる効果や、未成年者の喫煙を防止する意味から、値上げや自動販売機の撤去は、推進に値する案だろう。

〈注3〉 (1)バランスのとれた栄養をとる (2)毎日、変化のある食生活を (3)食べすぎを避け、脂肪は控えめに (4)お酒はほどほどに (5)たばこは吸わないように (6)食べものから適量のビタミンと繊維質のものを多くとる (7)塩辛いものは少なめに、熱いものはさましてから (8)焦げた部分は避ける (9)カビの生えたものに注意 (10)日光にあたり過ぎない (11)適度にスポーツをする (12)体を清潔に

〈注4〉 1997年に米がん研究財団などが発表した15ヵ条。「植物性食品を中心に多種類食べる」「焦げた食品はたべない」など「12ヵ条」と同様な内容があるが、「穀類・豆類・根菜類を1日600~800グラム食べる」「肉(牛・豚・羊)は1日80グラム以下。魚・鶏肉を勧める」などの数値めどを示している。

〈注5〉 平山雄氏の研究、がん研究振興財団「がんの統計’99」にも掲載

〈注6〉 日本たばこ産業、2000年調査

〈注7〉 例えば1998年、米たばこ業界は全米50州当局と2460億ドル、約26兆5000億円の支払いで和解をした。最近では2000年7月14日、フロリダ州での代表訴訟で、陪審団はたばこ会社5社に対し1450億ドル、約15兆6600億円の懲罰的賠償を命じた。被告会社側は控訴し、裁判は継続中。

〔広報・宣伝の方法〕
 日常的な普及・広報活動は、がんの知識、一次予防の重要性、早期発見・早期治療の有用性、そのための集団検診受診の勧奨などを内容としてきた。これらの内容の広報活動は、今後も継続する。

パンフレット、協会報、各支部組織の機関紙などが使われ、今後はインターネットの活用も広がっていくだろう。わが国のパソコンの普及はすでに4割近くに達し(注8)、インターネットの情報伝達・広報手段としての道は広がっていく(注9)。支部でも独自のホームページ開設が増え、インターネット・ニュースレターを定期的に発信し始めたところがある。人的制約などからそこまでできない支部でも、協会本部のホームページに設置されている支部のページを活用するなどして、一般からのインターネットでの情報収集欲求に応える必要がある。

とはいえ、一方で情報通信環境が整備されていないところもあり、当面は従来のプリントメディアやラジオ・テレビと併用する形で利用することになろう。

一方通行的な広報だけでなく、双方向的な活動も求められる。双方向的な活動は、従来、本部や各支部でおこなっているがん相談などが典型的なものだが、直接対面方式、文書や電話による相談、インターネットによる相談や各種問い合わせへの対応など、いろいろな内容・方法が考えられる。

〈注8〉 総務庁、99年全国消費実態調査で37.7%

〈注9〉 99年通信白書、全人口に占めるインターネット普及率は21.4%、世界13位

〔がん征圧月間、全国大会、協会賞の効果〕
 普及・広報活動の凝縮されたものとして、毎年9月のがん征圧月間、全国大会、日本対がん協会賞がある。

がん征圧月間は1960年(昭和35年)に日本対がん協会、日本医師会の主催、自治体や各地医師会などの後援で始められ、20世紀中に41回を重ねた。68年(昭和43年)からのがん征圧全国大会は2000年で33回になった。月間には全国大会とともに、各地で各支部が中心になって講演会、シンポジウム、がん相談、パネル展示や街頭広報活動が幅広くおこなわれ、がん知識の普及・広報活動に相乗的な効果を呼んでいる。

全国大会と同じ年に制定された日本対がん協会賞は、がん集団検診の第一線で活躍してきた人や、検診・診断方法の工夫など、がん検診の地道な活動に対して贈られ、33回の受賞者、受賞団体の総計は139人、91団体にのぼる。

いずれも協会内外からその意義を認められ、今後も継続する価値がある。

征圧月間、全国大会については、惰性的に従来のやり方を踏襲するのではなく、時代の変遷や実施環境に適応して、内容を見直して行く。

協会賞は、地道な活動を評価する賞として存続させながら、新風を吹き込むため、選考対象に検討を加える。

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【2】検診事業の推進
〔検診の重要性確認〕
 日本対がん協会の検診事業は、日本独自の検診車による集団検診から出発した。その原点は、「病院に来る患者を待つのではなく、こちらから出かけて検診すれば、もっと命を救うことができる」という故黒川利雄氏(元東北大学長)らの慧眼によるものであった。その後、検診センターによる施設検診が併設され始めたが、検診事業は現在46支部のうち41支部でおこなわれ、支部活動の中心となっている。前述のように、二次予防の重要性は21世紀に入っても当面変わらない。日本対がん協会には、早期発見して早期治療につなげるというがん対策の柱を担う使命があることを、改めて確認したい。
〔検診事業の課題〕
 実績を積み上げてきた各支部の検診活動が、曲がり角に立たされている。

検診を取り巻く最近の状況が、各支部の経営的な苦境を強めている。この原因には、いくつかの複合的な要素が重なり合っている。バブル経済の崩壊で経済環境が悪化したのに加え、次のような状況が拍車をかけている。

即ち、(1)受診者数が頭打ちになってきたところに、老人保健法のがん検診負担金が1998年(平成10年)度から廃止され、地方交付税の一般財源として配分されることになったこと、(2)そのため一部の市町村では従来ほど住民検診を重視しない傾向が見られ始めたこと、(3)その影響として、一部に受診者の減少がみられること、(4)地方財政の悪化で検診車等に対する補助が減少してきたこと、など行政絡みの問題がある。そのほか、競争的な関係に立つ検診団体の中には精度管理を犠牲にしてでも安い検診料を設定したり、都会の大病院など既成医療機関が健診部門を充実させてきたことなど、支部にとっては厳しい環境が重なりつつある。

これらの傾向が、21世紀も続くかどうかは即断できない。しかし、一般財源化や自治体の一部にみられる消極的な対応を、そのまま了として受け入れることはできない。国や自治体に対しては、これまで述べてきたがん検診の必要性を機会あるごとに訴え、「検診先進国」であるわが国の取り組みを維持し、強化するよう求めることが肝要である。

同時に、日本対がん協会の本部・支部としては、検診後のアフタケアやきちんとした精度管理に立った検診こそが必要であることを訴え、またそうした検診が、公的使命を持つわれわれの組織の役割であることを自覚し、たとえ逆風がしばらく続こうとも、それに立ち向かっていかねばならない。

がん検診の有効性論議については、正しい理解を求めたい。1998年(平成10年)、厚生省の「がん検診の有効性評価に関する研究班」(久道班)は、胃、子宮、乳房、肺、大腸の5部位のがん検診に関する内外の調査・研究論文322件を分析し、胃がん、大腸がん、子宮頚がんなど検診の有効性が証明されたものと、子宮体がんなど十分に証明されていないものがあるとの報告と勧告をまとめた(注10)。

この報告の一部の報道が、がん検診全般の有効性に疑問があるかのような印象を与え、誤解を与えた。

一般的に、早期発見・早期治療をすれば、がんは「死の病」ではなくなってきており、その後、新しい研究の調査(久道班=注11)や、的確な精度管理のもとでの現行肺がん検診の有効性を示す報告(藤村班=注12)も出されている。それらをふまえ、検診の必要性を引き続き十分に訴える必要がある。

適正な検診、正確な診断、必要なアフタケアなど、十分な精度管理がなければ、有効な検診効果を期待できない。検診業務にあたる者として、これらの事実を認識して、二次予防の効果が十分出せるような検診業務に努めなければならない。

<注10> 1998(平10)年、久道茂東北大教授らの「がん検診の有効性評価に関する研究班」報告は、がん検診について次のような「勧告」をした。

【胃がん】
逐年のX線検査を用いた胃がん検診受診を勧奨する証拠はかなりある。ただし検査の限界に関する十分な説明を事前に行なうべきである。

【子宮頸がん】
30歳以上の女性を対象にした細胞診による子宮頸がん検診の有効性を証明する充分な証拠がある。ただし、検診を行なう適切な対象年齢、間隔につき検討を続ける必要がある。

【子宮体がん】
現行の子宮体がん検診の有効性は充分に証明されているとはいえず、早急に検討する必要がある。

【乳がん】
視触診による乳がん検診は、生存率の比較による研究において無症状の場合は死亡リスク低減効果が認められるが、有効性を示す証拠は必ずしも十分でない。マンモグラフィによる検診には、有効性を示す確かな証拠がかなりあることから、マンモグラフィの導入に関して、早急な対応が求められる。

【肺がん】
肺がんの生存率は一般に極めて低い。しかし、肺がん検診を逐年受診することの有効性は示唆されている。ただし、現行の方法による肺がん検診の効果はあっても小さいことは事実である。肺がん検診は定められた方法を厳守し、精検は高い受診率・完了率を確保すべきであるが、一方、精検に伴う合併症についても事前に正確に伝え同意を得ることが必要である。なお、個別検診の一般化にあたっては厳重な精度管理を前提とする必要がある。また、集団検診へのCTの導入など一層早期の発見の研究が必要である。

【大腸がん】
便潜血検査による大腸がん検診を勧奨する十分な証拠がある。免疫便潜血検査2日法による逐年検診の効果とその大きさを実証していくべきである。また、2日法については、特異度、精検受診率を高く維持することが重要である。精検は全大腸内視鏡検査か、S状結腸内視鏡検査と注腸X線検査の併用で行なうのが望ましい。

〈注11〉 1999(平11)年、久道茂東北大教授らの研究班報告「がんの原因となる微生物等を発見する検診の有効性に関する研究についての文献学的調査」

〈注12〉 1999(平11)年、藤村重文東北大教授らの「肺がん検診の効果の判定とその評価方法に関する研究班」平成9~10年度報告書速報

〔施設整備の問題点〕
 検診を行なっている41支部は、すべてが検診車を所有し市町村の住民検診や、職域・一般事業所検診を受け持っている。うち、検診センター等の検診施設(検診所)を持ち、施設検診をおこなっているのは、28支部である。

検診車の所有は、全支部で900台におよぶ。そのほとんどは、道府県の補助、日本自転車振興会の補助、年賀はがきの配分金、日本宝くじ協会の助成などを受けて整備された。日立製作所からの創業75年記念寄付(1985年)によって整備した47台の検診車もまだ7割が稼動している。検診車は10~15年が耐用年限といわれるが、昨今の経済事情による補助金の減少で、更新が計画通り進まない深刻な状況に直面している。

日本対がん協会の集団検診は、1960年に宮城県支部が同県内で始めた胃の検診車による巡回検診から発展したという歴史的経緯もあって、他の検診団体が敬遠する人口の少ない農山村や離島にまで出かけ、住民検診を受託している。

これらの受診者は減少傾向ではあるが、公益法人としては経済効果だけを優先して止めるわけにはいかない。

長期的にみると、検診車による集団検診は相対的な比重が落ちると思われるが、その役割は当分なくならないだろう。従って、われわれは検診車の整備財源を確保しながら、なお新たな整備の道を開拓することを迫られている。

検診センター等の施設検診は、今後比重を増して行くものと予想される。

支部全体では年間1000万人を超す検診を行なう中で、検診機器の整備資金調達は各支部共通の悩みになっている。検診車、施設検診とも、マンモグラフィ(乳房X線撮影)やX線CTなどに代表される新しい検診技術の設備整備も求められている。技術革新の成果を、検診に積極的に生かして行きたい。

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【3】研修・研究助成活動
〔組織内研修〕
 日本対がん協会の専門家育成事業は、(1)組織内(支部)職員の研修、(2)奨学金等による専門医育成への助成(研修医制度)、(3)研究費補助ネどによる研究助成、に分けられる。

組織内研修は、支部職員の総合研修会(事務職を含めた総合研修と、保健婦・看護婦研修)と、2000年度から再開する診療放射線技師の技術研修会がある。とくに、肺がんやマンモグラフィの読影医の養成が叫ばれている昨今、時代の要請である専門医や放射線技師の技術研修会は対ガン協会組織の質的充実に直結し、精度管理の向上にも資するものであり今後重視したい。

〔研究助成と専門医養成〕
 本部は「地方研究助成」として、毎年4~5000万円を全国の支部を経由して支出し、各地のがん研究や研修を支援している。過去10年間の実績累計は、5億円を超える。

また若手医師に奨学金を出し、がん専門病院で知識・技術を磨く研修医制度は、1970年(昭和45年)から始められ、2000年までに累計106人に達した。将来の人材育成、対がん協会の裾野を拡大する意味合いからも有効であった。今後は奨学金を得て研究するだけでなく、研究成果をまとめて公表したり、対がん協会の日常活動に協力してもらうことも検討したい。

研究助成や研修医制度のあり方は、学問の進歩や研究環境の変化によって、求められる内容が変わる。支部によっては、募金をこの分野の特定財源として活用しているところもある。助成の額や対象については再検討が必要だろう。巨額の費用が必要となるがんの基礎研究助成などは、本来、国が正面に立って推進すべき課題であり、日本対がん協会が担うべき助成対象や資金調達・配分方法など、時代の要請に合う有効な研究助成のあり方を考えて行く。

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【4】募金活動
〔募金の意義〕
 日本対がん協会は、癌研究会、日本医師会、経済界、学界、その他医療機関と、朝日新聞社のバックアップによって誕生した。活動資金は個人・法人の寄付を中心に据えた。

その後、全国に支部ができ、がん予防知識の普及と集団検診を二大事業に、組織は発展してきた。支部が増えるにつれて、支部組織の態様や資金構成も多様化したが、「民間の善意」を柱とする精神は生き続けている。

現在、本部は年間に百数十社の法人と2000人以上の維持会員から寄付を受けている。香典返しなど一時的な寄付も100件を超える。支部も、各地域で独自の募金活動をしているが、支部の場合は、一部を除いて年間収入の中で募金が占める比重は大きくない。

しかし、募金活動は財政的な面だけでなく、がん予防知識の普及やがんへの認識を高めてもらう面での意義も大きい。国民運動としてのがん征圧運動を進めるために、募金の持つ意味を再確認し、音楽会などのチャリティーショーを含め新たな募金方法も開拓しながら、21世紀も続けていきたい。

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【5】組織の活動・強化
〔本部と支部の関係〕
 日本対がん協会の本部・支部関係は、一般にみられる指揮・命令系統のある上下関係ではなく、「がん征圧」という共通の目的に向かって活動の分野、役割を分担したゆるやかな連合体である。本部は各支部に共通する事柄を担当し、支部間のまとめや連絡調整、外部に対する一本化窓口として機能し、必要な場合には、支部に対して一定の方向性を示してきた。今後もこの基本的な関係は維持して行きたい。

支部は、それぞれ成り立ちや構成を異にしているが、一支部を除いて財団法人化されている。対がん協会独自の支部は12支部で、(財)結核予防会の支部を兼ねているところが34支部、うち(財)予防医学事業中央会の支部も兼ねた三団体統合支部は18支部である。ほかに、全国労働衛生団体連合会(全衛連)の会員や県の外郭団体を兼ねているところもある。

日本対がん協会、結核予防会、予防医学事業中央会はそれぞれ異なる役割がある。これまで多くの支部で、効率的に事業を進めるために統合が進められてきた。今後も、それぞれの事情に従って対応するのが適切である。

中央では、三団体本部間で年間行事や会議日程などの調整と協力を進めている。統合支部が多い実態を踏まえ、可能な範囲で効率的に対応する努力を続けて行く。

〔がん相談等の充実〕
  普及・広報や検診・検査以外の対外的な活動として、がん相談は組織の強化のためにも有効である。一般への接点として、がん相談は重視したい。本部では、現行の医師との面接による相談に加えて、電話相談や文書やインターネットによる相談も、近い将来に実現を図りたい。
〔患者・治癒者グループとの関係強化〕
 高齢化でがん患者が増える中で、治療技術が進み、がんの治癒率が向上すると、がん経験者が一層増加する。患者や治癒者の自己の経験に根ざした活動は、がんの知識普及や予防広報に説得力を生む。また、再発への不安・警戒もあり、同病者がグループとしてまとまることの意味も大きい。

日本対がん協会と密接な関係を持つ患者グループには「全国よろこびの会」があるが、患者・治癒者グループとの関係強化は、21世紀に、より重視して行く。

従来、がんへの取り組みは、ともすれば予防と治療で終了し、病気が治った人のアフタケアは顧みられなかった。がんの生存者が数を増し、健康寿命を延ばす仲間に入りつつある現在、患者や治癒者の充実した生活を求めて共同活動をおこなうことは、長寿への取り組みと同様に時代の要請となる。

〔国際化への取り組み〕
 がんの研究に関する国際的な交流は盛んであり、不可欠なものだ。がん予防運動の分野でも、効果あるがん対策を推進するために、国際交流は有効である。

例えば、たばこ対策、国家間のがん政策の比較、がん征圧運動に役立つ最新知識の取得などに国際的な視点が必要であり、同時に国際的にみて進んだ分野での日本の状況を外国に知らせることも有益である。組織の活動などに関する英文資料等も充実させる。

日本対がん協会の本部・支部とも、国際的な活動に取り組む体制が十分できていないのが実状である。当面の業務と組織の実態からみると、一気に体制を作ることは至難であるが、21世紀初頭にはその端緒を開きたい。

〔がん研究と個人情報保護基本法〕
 立法準備がすすめられている「個人情報保護基本法」が、「地域がん登録」やがん研究に支障をおよぼす恐れが危惧されている。がん罹患者を把握する「地域がん登録」制度は、33道府県と広島市で実施され、病院や医師からのデータがその県で決められた「登録室」に報告される。内容は統計的に処理されて、がんの患者数や生存率の推計など、いろいろな研究に利用されている。がんの病名告知が一般化されていないため、登録の内容は患者本人には知らされていない。

「個人情報保護基本法」大綱案(中間整理)には、個人情報の収集・利用にあたって、本人からの取得や透明性確保の原則が盛り込まれている(注13)。原則通りに適用されると、がん登録が継続できなくなったり、検診データの集計などが制約される恐れが指摘されている。

がん対策の確立やがん患者に対するインフォームドコンセントの資料のためにも、その基礎データとして地域がん登録、院内がん登録は重要な役割を持つ。新しい法律が、がん研究に不可欠なデータの収集・利用の妨げにならないよう理解を求め、必要な研究が継続できるような法的措置が講じられるよう働きかけたい。

〈注13〉 政府の個人情報保護法制化専門委員会(委員長・園部逸夫元最高裁判事)が2000年6月2日に大綱案(中間整理)を発表。基本原則の「透明性の確保」には、「個人情報はその取り扱いに関し、個人が自己の情報の取り扱い状況を把握し得る可能性、および必要な関与をし得る可能性が確保されること」とある。また「事業者が遵守すべき事項」に、個人情報の取得は原則として本人から取得すること、第三者への提供は本人の同意を得ること、などが盛り込まれている。法律の適用にあたっては「表現の自由、学問の自由等に十分留意すること」の表現もあるが、実際の法案でどう規定するか、どのような分野を適用除外にするかなど未確定の部分が多い。